ここまで「LRR(ライブリリース率)」「返還率」そして「譲渡率」について見てきましたが、実際に日本でどのような傾向があるのか、具体的な数字で見ていきましょう。
ソースは「令和4年度動物愛護管理行政事務提要」(令和3年度集計分)(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html)です。
成犬のLRR
成犬の引取り数は19,229頭、返還数は8,383頭、譲渡数は9,010頭、殺処分数は2,249頭です。
単純LRRは(返還数+譲渡数)/引取り数で計算されます。
LRR=(8,383+9,010)/19,229=0.905(90.5%)
アシロマLRRは(返還数+譲渡数)/(返還数+譲渡数+殺処分数)で計算されます。
アシロマLRR=(8,383+9,010)/(8,383+9,010+2,249)=0.886(88.6%)
一般的にはアシロマLRRの方が高値を示すはずですが、ここではアシロマLRRが低値を示しています。念のため、処分保留数(未譲渡や長期ケアのため引き続きシェルターに滞在している動物の数)を計算してみると、19,229-19,642=-413となります。なぜ処分保留数がマイナスになるのかというと、おそらく年度をまたいで何らかの「処分」に至った犬の数が、次年度に繰り越す犬の数を上回ったのでしょう。
子犬のLRR
成犬と同様に、子犬のLRRも計算してみましょう。
子犬の引取り数は4,718頭、返還数は19頭、譲渡数は4,106頭、殺処分数は540頭です。
単純LRR=(返還数+譲渡数)/引取り数
=(19+4,106)/4,718=0.874(87.4%)
アシロマLRR=(返還数+譲渡数)/(返還数+譲渡数+殺処分数)
=(19+4,106)/(19+4,106+540)=0.884(88.4%)
こちらは処分保留数がプラスですので、アシロマLRRの方が高値を示します。
成猫のLRR
成猫の引取り数は11,288頭、返還数は193頭、譲渡数は7,412頭、殺処分数は4,311頭です。
単純LRR=(返還数+譲渡数)/引取り数
=(193+7,412)/11,288=0.674(67.4%)
アシロマLRR=(返還数+譲渡数)/(返還数+譲渡数+殺処分数)
=(193+7,412)/(193+7,412+4,311)=0.638(63.8%)
子猫のLRR
子猫の引取り数は23,517頭、返還数は31頭、譲渡数は15,476頭、殺処分数は7,407頭です。
単純LRR=(返還数+譲渡数)/引取り数
=(31+15,476)/23,517=0.659(65.9%)
アシロマLRR=(返還数+譲渡数)/(返還数+譲渡数+殺処分数)
=(31+15,476)/(31+15,476+7,407)=0.677(67.7%)
これらの数字から、猫のLRRは犬のそれよりも総じて低いことがお分かりになると思います。日本では飼い主不明猫の引取り拒否が横行していますから、それがなければ猫のLRRはもっと低いはずです。