前回、「令和4年度動物愛護管理行政事務提要」(令和3年度集計分)(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html)を基に、ウチの自治体(「自治体X」とします)について「LRR(ライブリリース率)」「返還率」そして「譲渡率」を計算してみました。なお、LRRは「アシロマLRR」、譲渡率は「修正譲渡率」を採用しています。
自治体Xのデータをおさらいします。カッコ内は全国平均です。
成犬→LRR:97.1%(88.6%)、返還率:8.1%(50.6%)、譲渡率:96.9%(80.0%)
子犬→LRR:83.8%(88.4%)、返還率:0%(0.4%)、譲渡率:83.8%(88.4%)
成猫→LRR:94.7%(63.8%)、返還率:0.5%(4.3%)、譲渡率94.7%(63.2%)
子猫→LRR:48.6%(67.7%)、返還率:0%(0.1%)、譲渡率:48.6%(67.6%)
ここで際立っているのは「成犬の返還率の低さ」と「子猫のLRRの低さ」です。
成犬の返還率の低さ
自治体Xは成犬の返還率の低さが際立っています。もちろん、自治体Xが飼い犬の返還の努力を怠っているわけではありません。私の肌感では、少なくとも飼い主がいる成犬については、ほぼ返還されているといってよいでしょう。にもかかわらず成犬の返還率が低いのは、自治体Xが引取っている「飼い主不明」の成犬のほとんどが、野外で繁殖したと推測される「野犬」だからです。
野犬の譲渡率の高さ
ここで気になるのは、成犬の譲渡率の高さです。返還されなかった成犬のほとんどが野犬であるとすると、譲渡されている成犬のほとんどが野犬であるといえます。譲渡先が個人であるか団体であるかはこの統計ではわかりませんが、譲渡が適切に実施されているかどうかについては、よく監視していく必要があるでしょう。
子猫のLRRの低さ
子猫のLRR(=譲渡率)が低いのも自治体Xの特徴です。成猫の譲渡率の高さを考えると、子猫の多くが殺処分されていると推測されます。収容された子猫のケア体制に問題があるのかもしれません。
ウチの自治体を例に、統計指標の読み方の一例をお示ししました。その自治体が抱えている問題は、数値で示すと一目瞭然です。しかし数値はあくまでも単なる数値であり、必ずその自治体の施策の「文脈」で読む必要があります。なお自治体Xは「譲渡を推進して、殺処分を減らす」という国の施策を忠実に実行しています。今後の方針としては
・野犬の捕獲と譲渡を粛々と実施する
・子猫の殺処分数を減らすため、ミルクボランティア制度の導入を目指す
だそうです…嗚呼…。