シン・シェルターメディスン超入門(49)収容動物の栄養管理

動物福祉の「5つの領域(Five Domains)」の一つ目は「栄養(Nutrition)」です。動物種や年齢など個体の特性に合わせた給餌や給水は、動物福祉の基本です。動物の栄養管理はそれだけで1冊本が書けてしまうほど深いテーマなのですが、ここは「超入門」ですので、あまり深入りせずにさらりと見ていきたいと思います。

 

給餌の基本

給餌の一般的な注意点は次のとおりです。

 

「総合栄養食」の表示がある市販のフードを与える

「総合栄養食」とは必要な栄養素をバランスよく含んだ、いわゆる完全食です。「総合栄養食」については、改めて触れたいと思います。

 

飲用水の供給

フードに加え、新鮮できれいな水を常に飲むことができるようにしておく必要があります。

 

同じフードを一貫して与える

特に猫はフードを急に変えると食べなくなることがあります。フードを変える際には前のフードと混ぜて与えるなどの配慮が必要です。

 

食器の洗浄と消毒

食器は都度洗浄し、必要に応じて消毒します。特に同じ食器を他の個体に使用する際には適切な洗浄と消毒が必要です。

 

犬の給餌

犬は出されたフードを一気に食べるため、1日1〜2回の定期給餌(決まった時間に給餌する)が基本です。ただし大型犬は一気にたくさんのフードを食べると胃捻転などのリスクがあるため、必ず1日2回以上に分けて与えます。なお子犬や特別に栄養が必要な犬(妊娠中、授乳中、削痩、衰弱など)の場合は定期給餌の頻度を増やすか自由採餌にします。複数の犬を同じ外囲いで共同飼育している場合は、すべての個体がちゃんとフードを食べられているかを必ず監視する必要があります。

 

猫の給餌

猫はフードを少しずつ食べるため、自由採餌(フードを外囲いの中に置き、自由に食べさせる)が基本です。ただしこの場合ドライフードを与え、残ったフードは毎日交換する必要があります。ウェットフード(猫缶やパウチなど)を与える場合や特別な栄養管理が必要な猫については、1日2回以上の定期給餌が必要です。また定期給餌には飼育係との絆を深める利点があるため、あえて自由採餌と定期給餌を組み合わせることもあります(例えば午前中に猫缶を定期給餌し、午後はドライフードを置いておく)。