シン・シェルターメディスン超入門(51)BCS

動物の栄養状態の指標としてよく用いられるのがBCS(Body Condition Score)です。BCSは動物の栄養状態の日常的なモニタリングにも用いられますが、虐待(特にネグレクト)の状態を判定するためにも用いられます。

 

BCSとは

動物の栄養状態を判断する際に、体型を基準にするのはきわめて自然です。しかし「太っている」とか「痩せている」と漠然と言ってもそこには主観が入りますし、基準を測る「ものさし」がなければ適切な記述が難しいことは容易に想像できます。そこで動物の(主に犬や猫)の栄養状態を客観的に記述する「ものさし」として用いられるのがBCSです。

 

Purinaスケール

通常BCSといえば“Purina Body Condition System”、いわゆる“Purinaスケール”を指します。Purinaスケールは主に皮下脂肪の蓄積度合いから、<1:削痩><2:非常に痩せている><3:痩せている><4:やや痩せている><5:理想体型><6:やや太っている><7:太っている><8:非常に太っている><9:肥満>の9段階で評価します。

BCSを評価する際には、上から肋骨を観察し、横から胸椎部、腰椎部、骨盤部、腹部および鼠径部に沿って観察していきます。具体的な評価方法については「Purina BCS」で検索してみてください。

 

TACCスケール

ネグレクトのリスク評価に用いられる尺度の“Tufts Animal Care and Condition”(TACC)の中で、身体状態の尺度として用いられているBCSが“TACC scales for assessing body condition”です。TACCはBCSだけではなく、動物が置かれた環境なども含め総合的に判断するので、TACCスケールだけが単独で用いられることはほとんどありませんが、こんなものもあるということも知っておいてください。ちなみにTACCスケールは「痩せ」の尺度だけで、<1:理想体型>から<5:削痩>までの5段階で評価します。TACCスケールの「1」はPurinaスケールの「5」、「5」は「1」に相当します。

 

BCSの意義

BCSはアニマルシェルターにおける動物の栄養状態をモニタリングする指標として用いられます。まず動物をシェルターに受け入れた際に、身体検査の一環としてBCSを測定します。その後動物の滞在中に、定期的にBCSを測定します。それを見ながらフードの量や給餌頻度などを調整していくことになります。

また上記のとおり、BCSがネグレクトのリスク評価に用いられることもあります。もちろん現状で「痩せすぎて危険」という評価にも意味がありますが、もうひとつ意味があります。痩せたペットが保護された際に、飼い主は「餌をちゃんとあげていたのに、なぜか痩せてきた」と言い逃れをすることが多いのですが、シェルターで適切な給餌を行った結果BCSが改善したとしたら、飼い主が嘘をついていることが強く疑われます。