【シェルター関係者向け】犬の「謎の」呼吸器疾患についてのまとめ

米国で多数発生している犬の「謎の」呼吸器疾患について、フロリダ大学シェルターメディスンプログラムからの情報をまとめてみました。ソースはhttps://sheltermedicine.vetmed.ufl.edu/2023/11/27/mysterious-respiratory-disease/です。

 

(2023.11.27現在の情報)犬の「謎の」呼吸器疾患についてのまとめ

 

概要

米国の動物病院で、原因不明の呼吸器疾患に罹患した犬についての報告が増加しています。その特徴として、一般的に処方される抗生物質が効かないこと、また検査しても既知の病原体に対して陰性であることが挙げられます。

 

症状

感染性が非常に高く、感染した犬は咳、くしゃみ、鼻汁、流涙、発熱、食欲不振、無気力の症状を示します。重症の場合、致死性の肺炎に移行する可能性があります。また咳は数週間から数ヶ月続くことがあります。

 

疫学

輸送、デイケア、ドッグショー、ドッグパークなど、多数の犬が集合する場所で他の犬と接触した犬にリスクが高く、フロリダ州を含む少なくとも12の州で疑わしい症例が報告されています。現時点でアニマルシェルターへの影響はほとんどありませんが、現在はシェルターへの犬の収容数が激増しているため、予断を許さない状況です。なお、ヒトや他の動物種への影響は報告されていません。

 

原因

原因がまったく未知の病原体によるものか、感染性呼吸器症候群(CIRDC、いわゆる「ケンネルコフ」) の原因を含む既知の病原体によるものかは明らかになっていません。ただし以下の点が指摘されています。

 

・症例の多くは診断検査が実施されていないか、実施されていたとしても症状消失後数週間後に実施されており、原因の究明につながっていない。

・症例は一般の開業獣医師から報告されており、彼らはシェルターでしばしば問題になるものの、一般のペットではまれな犬インフルエンザやレンサ球菌症には不慣れかもしれない。これらの疾患も致死性の肺炎を引き起こす可能性がある。

・何らかの既知の病原体が、ドッグショーやデイケアなど多くの犬が集まる場所を介して局地的なクラスターを発生させている可能性がある。

 

現時点で注意すべき点

・呼吸器症状を示す犬を早期に発見し、速やかに隔離する。

・発症後4日以内に、検査キットによる簡易検査を実施する。

・犬を、多数の犬がいる場所に極力近づけない。

・二次感染による重症化を防ぐため、CIRDCに有効な混合ワクチンを接種する。飼い犬にはインフルエンザワクチンも推奨。