シン・シェルターメディスン超入門(55)個人衛生

いくらシェルターの施設や物品を清潔に保ったとしても、動物を取り扱う人が病原体を持ち込んだり、手についた病原体を動物に付けてしまっては元も子もありません。個人衛生の肝は「手洗い」と「健康管理」、そして「身だしなみ」です。

 

手洗い

手洗いは衛生の基本です。少なくとも「作業開始前」「他の作業に移る前、もしくは他の個体に触れる前」、そして「作業終了後」には確実に手洗いを実行する必要があります。頻繁な手洗いができるよう、シェルター内の使いやすい場所に手洗いシンクが備え付けられていることが理想です。

洗浄消毒の3つのステップは、手洗いにも適用されます。最初に流水で手を洗い、石鹸を用いて有機物を物理的に除去し、石鹸を完全にすすいで手を乾燥させた後にアルコールで消毒します。流水が使用できない場所では手指消毒器が用いられることがありますが、洗浄による物理的除去が期待できないため、完全に手洗いの代わりにはなりません。

 

個人の健康管理

よく「動物由来感染症」などという失礼な言葉が使われますが、逆に人間から動物に感染症が伝播することもあります。例えば水虫(皮膚糸状菌症)は犬や猫にも感染しますし、SARS-CoV-2(いわゆる「新型コロナウイルス」)が人間からペットに感染したと疑われる事例も発生しています。特に動物に直接触れるスタッフは日常から自らの健康に気を付け、必要に応じて医療機関を受診する必要があります。

 

身だしなみ

シェルターでの作業の際には、病原体の持ち込みや持ち出しを防ぐ観点から、清潔な専用の作業着や作業靴を着用します。私服で作業すべきではありませんし、作業着を自宅に着て帰ってはなりません。感染症に罹患している可能性がある動物を取り扱う際には、ガウン、手袋、マスクなどの個人用防護具(PPE)を着用し、別の個体を扱う際にはPPEを交換します。

 

フットバス

靴裏の病原体を殺菌するために、飼育室の入り口にフットバス(踏込み槽)やフットマットを設置することがあります。フットバスは適切に使用すればある程度の効果はありますが、靴裏は有機物が多く、消毒剤がすぐに不活化してしまいます。へたをすると消毒どころか、飼育室の中に汚れを広げることにもなりかねません。飼育室に入る際には、専用の靴に履き替えるかシューズカバーを用いるのが無難です。 

 

衛生教育

シェルターのスタッフに対して、個人衛生も含め、シェルターの衛生管理について衛生教育を定期的に実施する必要があります。大切なのは、衛生管理の意義について理解することです。「決まりだから」といって漫然と清掃や手洗いを行っていると、思わぬ落とし穴が待っています。