譲渡の障壁について考える(4)「完璧な」ペットへの期待

Hill’s Pet Nutritionによる“2023 State of Shelter Adoption Report”(以下「レポート」)※から、特に犬の譲渡が思うように進まない理由について見ています。

 

その3 「完璧な」ペットへの期待

「完璧な」ペットへの期待について、「レポート」ではこのような調査結果を示しています。

 

BARRIERS TO SHELTER PET ADOPTION:EXPECTING THE PERFECT PET

41% of pet owners elected to acquire a pet from a non-shelter source

23% couldn’t find desired age, breed or size of pet at a shelter

35% are concerned about health or behavior issues of shelter pets

 

保護動物の譲渡の障壁:「完璧な」ペットへの期待

ペットの飼い主の41%がシェルター以外の場所から迎え入れている

23%が「シェルターでは希望する年齢や品種、大きさのペットを見つけることができない」と回答

35%が「シェルターの譲渡動物の健康上又は行動上の問題に懸念がある」と回答

 

そもそもペットを飼おうとしている人が、アニマルシェルターから動物を迎え入れるという意識が薄いという問題があります。その要因として「完璧な」ペットへの期待があげられます。つまりシェルターには「望み通りのペットが入手できないという懸念」または「動物の健康や行動への懸念」があるというのです。

 

望み通りのペットが入手できないという懸念

アニマルシェルターはペットショップと異なり、希望どおりのペットが入手できる場所ではありません。ウチの自治体にも「マルチーズかポメラニアンが欲しい」といった問い合わせがよくあります。たまたま飼い主から引取った小型犬が譲渡対象になっていることもありますが、多くの場合は丁重にお断りすることになります。ウチは田舎なので、譲渡対象の犬の多くは中型~大型のいわゆる「野犬」です。「それでもよければ」とご案内はしますが、「じゃ、それで」とはならないのが現状です。

猫は品種による多様性が犬ほど著しくないため、シェルターからの譲渡は比較的容易ですが、犬は好みやライフスタイルへの適用など、品種の違いが選択の重要な位置を占めています。飼いたい犬種があらかじめ決まっている人にとって、シェルターはペットの入手先としては不適当かもしれません。犬種にどこまでこだわるかは個人の趣向の問題ですから他人がとやかく言えることではありませんが、その犬種にこだわる理由についてはしっかりと自問自答してほしいと思います。厳しいようですが、「流行の犬種だから」とか「好きな野球選手が飼っているから」といった理由であれば、そもそもペットを飼う意味そのものを問い直す必要があります。

 

動物の健康や行動への懸念

シェルターの譲渡動物については一定の健康管理や行動評価がなされているはずですが、100%間違いないとは言い切れません。その懸念を払拭するためには、ワクチン接種や駆虫といった基本的な予防医療を確実に実施するとともに、譲渡後のフォローアップにより譲渡後の動物の健康状態を把握し、シェルターのケアにフィードバックしていく必要があります。

 

※  https://www.hillspet.com/content/dam/cp-sites/hills/hills-pet/en_us/general/documents/shelter/hills-pet-nutrition-2023-state-of-shelter-adoption-report.pdf