譲渡の障壁について考える(5)「完璧な」ペットへの期待にどう対応するか

Hill’s Pet Nutritionによる“2023 State of Shelter Adoption Report”(以下「レポート」)※は、犬の譲渡が思うように進まない理由のひとつとして、「完璧な」ペットへの期待があるといいます。特に「アニマルシェルターでは希望どおりの年齢、品種、大きさなどのペットを見つけるのが難しい」という懸念があります。シェルターはこの懸念にどう向き合うべきでしょうか。

 

予期せぬ出会いを楽しむ

残念ながら、シェルターにはすべてが条件どおりの動物はめったにいません。いたとしても、宝くじに当たるような確率でしょう。しかし逆に、全く想定していなかった動物が意外にマッチするかもしれません。Dumb Friends League代表で獣医師のApryl Steeleはこういいます。

 

“What people often don’t consider is that shelters usually have a good understanding of an animal’s behavior. Being flexible on the exact breed of a dog often helps the best match for the adopter and the new pet, and it helps a shelter animal find a home.”

「人々が見落としがちなことは、シェルターは通常、動物の行動をよく理解しているということです。正確な犬種に柔軟に対応することは、多くの場合、新しい飼い主とペットのベストマッチを助け、保護動物が家を見つけるのを助けます。」

 

直訳すると少しわかりにくいですが、たとえ希望の品種の犬がいなかったとしても、そこに強いこだわりがなければ、シェルター職員は適切な次善の案を示してくれます。シェルター職員はさまざまな犬を見てきていますし、実際にその犬と一定期間過ごしているわけですから、適切なアドバイスができるというわけです。

 

また本人が希望するペットが、必ずしもライフスタイルなどと合致するとも限りません。Association for Animal Welfare Advancement代表のJim Tedfordはこういいます。

 

 “Shelter personnel are uniquely positioned to offer prospective adopters the advice they need to make the best choice for their families. The animals adopters are seeking to adopt may not necessarily be the most conducive to their lifestyles. Adoption counselors can steer adopters towards pets that are most likely to work for them.”

「シェルター職員は、譲り受け希望者がその家族にとって最良の選択をするために必要な助言を提供する独特の立場にあります。譲渡しようとする動物が、必ずしも彼らのライフスタイルに最も適しているとは限りません。譲渡カウンセラーは、譲り受け希望者に最も適したペットを紹介することができます。」

 

もちろんシェルター職員から勧められたからといって、その動物を引き受けなければならないなどということはありません。また新たな出会いを探せばよいのです。単にシェルターを「動物の入手先」としてとらえるのではなく、「動物との出会いの場」として楽しむという文化を広げていくのも、これからのシェルターのあり方なのかなと個人的には思っています。

 

※  https://www.hillspet.com/content/dam/cp-sites/hills/hills-pet/en_us/general/documents/shelter/hills-pet-nutrition-2023-state-of-shelter-adoption-report.pdf