譲渡の障壁について考える(9)アニマルシェルターへのイメージ

Hill’s Pet Nutritionによる“2023 State of Shelter Adoption Report”(以下「レポート」)※では、アニマルシェルターに対するイメージについての調査結果も示しています。

 

アニマルシェルターへのイメージ

アニマルシェルターへのイメージについて、「レポート」はこのような調査結果を示しています。

 

83% of pet owners who have visited a shelter had a good or excellent experience

42% view shelters as the No. 1 source of trusted information about pet adoption

57% have engaged with a community shelter via adoption, donation or volunteering

シェルターを訪問したことのある飼い主の83%が「良い経験または素晴らしい経験をした」と回答

42%が「シェルターが最も信頼できる情報源である」と回答

57%が「譲渡、寄付、ボランティア活動を通じて、地域のシェルターと関わったことがある」と回答

 

また、87%が「もっとペットが欲しい」と回答し、68%が「アニマルシェルターから迎え入れる可能性が高い」と回答しています。また回答者の57%が「シェルターの譲渡動物はワクチン接種済みでよく訓練されている可能性が高い」と回答しています。米国において、アニマルシェルターは一定の社会的地位を得ているといえます。

 

米国のアニマルシェルター

米国のアニマルシェルターの起源は、自治体の「犬収容所」です。動物の人道的な取扱いを求めるSPCAなどの動物保護団体の活動により、「犬収容所」は「人道的」アニマルシェルターに変わりました。そしてシェルターはペットに関する総合拠点施設になろうとしています。米国のシェルターも公営、民営、または行政からの委託を受けた「みなし公営」などさまざまな運営形態があり、事業内容もシェルターによって異なりますが、方向性は同じと考えてよいでしょう。「レポート」の調査結果は、シェルターが「ペットの総合拠点施設」として認知されつつあることを示しているのでしょう。

 

日本の「アニマルシェルター」

日本で同様のアンケート調査を行ったとしても、同様の結果となるかどうかはかなり怪しいと思います。日本で「アニマルシェルター」と言われてまず思い浮かべるのは自治体の「動物愛護管理センター」ですが、一般にそれは「殺処分施設」と認識されています。また日本にも民間のボランティア団体が運営している「アニマルシェルター」が多数存在することは重々承知していますが、その存在が一般に浸透しているかどうかははなはだ疑問です。

つまりシェルターが一定の社会的地位を有していて、そこで譲渡をどう進めていくかを考えていけばよい米国に対し、日本はスタートラインからして違うということを認識しなければなりません。日本にも保護動物の譲渡を行っている「アニマルシェルター」が存在することを、もっとアピールする必要があると思います。

 

※  https://www.hillspet.com/content/dam/cp-sites/hills/hills-pet/en_us/general/documents/shelter/hills-pet-nutrition-2023-state-of-shelter-adoption-report.pdf