シェルターでは猫に話しかけない方がいい? その2

豪州クイーンズランド大学などの研究チームは、アニマルシェルターに収容されている猫への“gentling”の頻度や手法が、その猫の行動にどのような影響を及ぼすのか調査しました※。“gentling”とは「穏やかな接触によって動物を落ち着かせ、信頼関係を築く手法」のことで、具体的には優しく撫でる、前足をそっとつかむ、しっぽを優しく引っ張るといったボディタッチを指します。

シェルターの収容猫に“gentling”を行うことで、満足行動が増加し不安が軽減されることはわかっていますが、どのような“gentling”が効果的かということについてはよくわかっていません。そこで研究チームは「実験1」で、“gentling”の回数や声掛けについて検証しました。その結果

 

・“gentling”は分割して少しずつ実施するより、同じ時間だけまとめて実施する方が効果的

(つまり1日に2分間の“gentling”を3回実施するより、まとめて1日6分間実施する方が効果的)

・“gentling”の際には無言で行うことが効果的

という結果が得られました。

 

今回は“gentling”の継続時間について検証した「実験2」をご紹介します。

 

実験2

猫にそれぞれ1日当たり0分、3分、6分、9分の“gentling”を4日間行いました。その結果、

 

・猫がケージの手前で過ごす時間は“gentling”の実施時間に比例して増加した。

・“gentling”を1日6分および9分実施した群においては、のどを鳴らす音や採食行動が増加した。

・見知らぬ人への反応行動については“gentling”の影響はみられなかった。

 

結論

実験1および2の結果から、研究チームはこう結論付けました。

 

・シェルターの収容猫への“gentling”は、猫がさらなる接触を求めてケージの手前で過ごす時間を増やし、結果的に譲り受け希望者に好印象を与える可能性がある。

・“gentling”は無言で1日6〜9分間、数日間かけて行うのが最適である。

 

ただしこれらの結果は、“gentling”に関するシェルターの政策に重大な影響を与える可能性があるため、これらの結果を確認し実証するにはさらなる研究が必要としています。

 

のらぬこの感想

シェルターの収容猫を馴らすためには、短時間の“gentling”の積み上げではなく、1日6~9分間の連続した“gentling”が効果的という結果は参考になりました。しかし声かけが効果を妨げるという結果については、さらなる研究が必要だと感じました。

 

※“The effects of the frequency and method of gentling on the behavior of cats in shelters” 

「gentlingの頻度と方法がシェルターの猫の行動に及ぼす影響」

Liuら(2020)、Journal of Veterinary Behavior Volume 39, September–October 2020, Pages 47-56

(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1558787820301039)