犬や猫をアニマルシェルターに入れない方法のひとつは、迷子のペットを速やかに飼い主に返還することです。ペットの返還に力を入れている自治体の例として、米国フロリダ州ポートセントルーシー市とアーカンソー州カボット市の取り組みを、米国人道協会のレポート(https://humanepro.org/magazine/articles/ask-experts-return-owner-strategies)から見ていきましょう。
迷子ペット保護の一般的な流れ
両市の取り組みについて見ていく前に、迷子ペット保護の一般的な流れについておさらいしておきましょう。大まかな流れは米国も日本も同じですが、地域の状況により2つのパターンがあります。
一時保護施設に収容する場合
地元に公営のアニマルシェルターがない場合、迷子のペットは一時保護施設に収容されます。一時保護施設は、米国は自治体の動物管理部の事務所に、日本は保健所に設置されることが多いようです。迷子のペットについて住民から通報があれば、担当者が現場に向かい保護します。また住民が直接一時保護施設に持ち込むパターンもあります。保護されたペットは一時保護施設内で首輪や迷子札の有無を確認し、マイクロチップをスキャンします。この時点で飼い主が判明すれば、飼い主に連絡し返還します。その際には返還手数料が発生します。
飼い主が不明な場合は、公示を行います。「いつ」「どこで」「どのような」ペットが収容されたかを、行政機関の掲示板に紙ベースで掲示します。またペットの写真を撮影し、行政機関のWebサイトに情報を掲載します。飼い主が名乗り出れば返還しますが、その際には返還手数料と収容期間に応じた保管手数料が発生します。公示期間を過ぎても飼い主が名乗り出ない場合はそのまま譲渡、または二次収容施設(公営、または提携している民営のアニマルシェルター)に移送されます。ちなみに、ポートセントルーシー市はこのパターンです。
アニマルシェルターに収容される場合
地元に公営のアニマルシェルターがある場合、迷子のペットは最初からそこに収容されます。違うのはそこだけで、あとの流れは前者と同様です。カボット市は市営のアニマルシェルターを持っていますので、このパターンになります。
両市の取り組み
ポートセントルーシー市やカボット市は、迷子のペットを一時保護施設やシェルターに入れることなく、現場から直接飼い主に返還する方策を考え、実践しています。シェルターに動物を入れないことはシェルターメディスンの基本ですから、これは非常に理にかなったやり方であるといえます。両市がどのような取り組みを行っているかについては、次回から詳しく見ていくことにしましょう。
※ 扱うペットの種類や返還手数料の取り扱いなどについては、自治体によって異なります。例えばウチの自治体は、取り扱いは犬と猫のみ(他の動物種は警察が扱います)で、返還手数料は犬のみ徴収します。