犬や猫をアニマルシェルターに入れない方法のひとつは、迷子のペットを速やかに飼い主に返還することです。ペットの返還に力を入れている自治体の例として、米国フロリダ州ポートセントルーシー市とアーカンソー州カボット市の取り組みを、米国人道協会のレポート(https://humanepro.org/magazine/articles/ask-experts-return-owner-strategies)から見ています。
ポートセントルーシー市
ポートセントルーシー市は人口約20万人、フロリダ州セントルーシー郡最大の都市ですが、ここ数十年の間に人口が急増した比較的新しい都市です。市の動物管理員によって保護された動物は、市の一時保護施設で5日間保管されたのちに、セントルーシー郡人道協会のシェルターに移送されます。
カボット市
カボット市は人口約2万数千人、アーカンソー州ロノーク郡最大の都市です。小さな市ですが、市の動物管理部門(Cabot Animal Support Services:CASS)はアニマルシェルターを保有しています。
“RTO mindset”
ポートセントルーシー市では、犬の75%、猫の17%を飼い主に返還しています。全米の返還率が犬20%、猫5%未満であることを考えると、驚異的な数字です。かつてポートセントルーシー市も、迷子の動物は速やかに保護し市の一時収容施設に収容していました。しかし飼い主が見つかることはほとんどありませんでした。Bryan Lloydが動物管理局の管理職に就任したのち、2013年から新しい取り組みを開始しました。何をしたかというと、
・マイクロチップの普及促進
・市のWebサイトによる速やかな公示
・ペットの保護現場における、住民への聞き込みの強化
この方策には、Lloydの“RTO mindset”(RTOの基本的な考え方)が色濃く反映されています。RTOとはReturn to Ownerすなわち「飼い主への返還」の略語です。Lloydは迷子のペット1頭1頭にかける時間だけではなく、全体的なコストも考える必要があるといいます。例えば収容や返還にかかる事務処理、シェルターまでの往復の交通費、収容にかかるコスト…など。そのために、迷子のペットを収容することなく返還するための仕組みを作ろうとしたわけです。また「シェルターに動物を入れない」というシェルターメディスンの基本もそこにはあります。Lloydはこう言います。
“Not only are we getting the animal back to their owner, but we’re also saving the taxpayer money, reducing stress for animals and reducing the number of animals at the shelter.”
「私たちは動物を飼い主に返すだけでなく、納税者のお金を節約し、動物のストレスを軽減し、シェルターにいる動物の数を減らします。」