返還率アップのヒント(3)テクノロジーの活用

犬や猫をアニマルシェルターに入れない方法のひとつは、迷子のペットを速やかに飼い主に返還することです。ペットの返還に力を入れている自治体の例として、米国フロリダ州ポートセントルーシー市とアーカンソー州カボット市の取り組みを、米国人道協会のレポート(https://humanepro.org/magazine/articles/ask-experts-return-owner-strategies)から見ています。

 

テクノロジーの活用

ポートセントルーシー市やカボット市は、迷子のペットを極力一時収容施設に入れずに飼い主に返還することを目指しています。そのための方法のひとつが「テクノロジーの活用」、具体的にはマイクロチップやデータベースの活用です。

 

マイクロチップのスキャン

迷子の動物の飼い主を特定するための最も簡単な方法は、マイクロチップのスキャンです。ポートセントルーシー市では動物管理員が常にマイクロチップスキャナーを携帯し、保護した動物のスキャンを現場で行います。マイクロチップが見つかればデータベースと照合し、飼い主を特定します。現場のスキャンでマイクロチップが見つからなかった場合は、事務所に戻ってからもう1回スキャンします。セントルーシー市のBryan Lloydは「マイクロチップの見落としはまずあり得ない」と言います。

なお米国では規格が異なるマイクロチップがいくつか存在するため、携帯するマイクロチップスキャナーはすべての規格に対応する「ユニバーサルスキャナー」です。ユニバーサルスキャナーにはマイクロチップの規格によって読み取り精度の得手不得手があるため、異なったブランドのスキャナーを2本携帯し両方でスキャンするという念の入れようです。日本においてはマイクロチップの規格は単一のため、そこまでの必要はないかもしれません。

 

マイクロチップの挿入サービス

アーカンソー州を含む米国の一部の州では、動物管理員がマイクロチップを挿入することができます。カボット市ではペットを飼い主に返還する際に、無料でマイクロチップを挿入するサービスを行っています。※日本ではマイクロチップの挿入は獣医師か愛玩動物看護師のみが実施できます。

 

独自のデータベース

ポートセントルーシー市やカボット市は、動物管理員が遭遇したペットの飼い主情報をデータベース化しています。それはまさに「足で稼いだ」、生きた情報です。現場の職員はいつでもそのデータベースを参照できるように、パソコンやタブレットを持ち歩いています。LloydやCabot Animal Support ServicesのAnn Strainは、このデータベースが返還率アップの一因であると述べています。