返還率アップのヒント(6)返還手数料を再考する

犬や猫をアニマルシェルターに入れない方法のひとつは、迷子のペットを速やかに飼い主に返還することです。ペットの返還に力を入れている自治体の例として、米国フロリダ州ポートセントルーシー市とアーカンソー州カボット市の取り組みを、米国人道協会のレポート(https://humanepro.org/magazine/articles/ask-experts-return-owner-strategies)から見ています。

 

返還手数料の問題

迷子のペットを収容することなく速やかに飼い主へ返還する方法について、「マイクロチップの普及」「速やかな公示と情報検索」「現場での聞き込み」の3つを紹介しましたが、カボット市のCabot Animal Support Services(CASS)のAnn Strainは、「通常、これらすべての手順を実行することで、ほとんどの場合、所有者を見つけることができます」と言います。

ただし飼い主が見つからない場合、または飼い主が見つかっても不在の場合は、スタッフが動物を引き取ります。その後も飼い主を探し続けることになりますが、仮に飼い主が見つかったとしても、飼い主が返還手数料を支払うことができるかどうかという問題があります。

 

返還手数料の減免

地域によりますが、米国ではペットの返還手数料が非常に高額になることがあります。一時収容施設に数日滞在しただけで400ドルを請求されることさえあります。ポートセントルーシー市のBryan Lloydはこう問いかけます。「彼らにそれを支払う余裕がないとき、あなたは断固とした態度を取りますか?それとも交渉しようとしますか?」

ポートセントルーシー市の返還手数料は25ドルで、1泊ごとに10ドルが加算されます。Lloydはこの加算費用を廃止することにしました。ここにLloydのコスト感覚が見えます。Lloydいわく「動物を私たちと一緒に過ごすためにさらに50ドルを費やすよりは、10ドル失ったほうがマシです」

CASSでは、登録とマイクロチップ装着を済ませた犬が初めて保護された場合、返還手数料を徴収しません。CASSのMike Wheelerはこう言います。「私たちは市の収益部門ではありませんし、そうあるべきでもありません」

 

日本の状況

日本においては、ペットの返還手数料は各自治体が定めていて、金額は自治体によってまちまちです。犬の返還手数料は数千円で、追加の保管費用は1日につき数百円~千数百円というのが一般的です。猫については返還手数料を徴収しない自治体もありますが、徴収するにしても犬よりも割安な設定のところが多いようです。私の経験では、迷子の飼い犬の場合はほとんどが収容当日か翌日、遅くても数日後に飼い主が名乗り出ることが多く、「返還手数料が払えない」と言われたことはありません。