返還率アップのヒント(7)速やかな返還がもたらすもの

犬や猫をアニマルシェルターに入れない方法のひとつは、迷子のペットを速やかに飼い主に返還することです。ペットの返還に力を入れている自治体の例として、米国フロリダ州ポートセントルーシー市とアーカンソー州カボット市の取り組みを、米国人道協会のレポート(https://humanepro.org/magazine/articles/ask-experts-return-owner-strategies)から見ています。

 

なぜ、そうするのか

両市の取り組みは「迷子のペットを収容することなく飼い主に返還する」ための試みです。では、なぜそうするのでしょうか。ポートセントルーシー市のBryan Lloydは「動物のストレスが軽減され、市民サービスが向上することが重要です」といいます。つまり動物を収容しないことによるストレス軽減と、速やかにかつ無料でペットを飼い主に返還することができることがメリットであるということです。しかしさらに大きなメリットがあります。それは「職員のモチベーション向上」と「地域住民の理解促進」です。

 

職員と住民の意識改善

カボット市のCabot Animal Support Services(CASS)のAnn Strainは、収容することなくペットを飼い主に返還するという仕事の大変さを認めながらも、この仕事にはそれだけの価値があるといいます。飼い主はいなくなったペットを必死で探しているかもしれないし、そうではないかもしれない。しかし飼い主の状況がどうであれ、目の前の動物は家に帰りたがっている。それを手助けするのが自分たちの仕事だと。Strainはこう言います「動物を家に返すときはいつも、たとえ家を見つけるのに30分かかったとしても、私の心は喜びでいっぱいです。死ぬほど怖がっているこの動物をシェルターに連れて行く必要がないからです」。そしてこう続けます「そこは彼らの家ではありません」。

Lloydは飼い主や返還されたペットの「喜び」が職員たちをも元気づけ、職員全員を新しい返還戦略のより強力な支持者にすると言います。「飼い主の大喜びする顔や、犬が尻尾を振って反応するのを見てきました」とLloydは言います。「こうした前向きなやりとりによって、職員は『飼い主に返してあげたい』と言うようになります。これらの言葉が職員を、追加の電話をかけたり、もう少し進んだり、通りを往復したり、さらに先の通りまで行ったりするよう促します。」

「動物管理員たちは日々の業務について気分が良くなったと感じています」とLloydは続けます。「そして彼らは、この組織が動物と地域社会の人々のために正しいことをしようとしている」と考えています。それが溢れ出ることを願っていますし、地域社会も私たちに対してそう思っています。」

担当者の立場から言えば、迷子のペットをひとまず一時保護施設に入れて飼い主が名乗り出るのを待つ方がたしかに楽です。しかしあえて「収容せずに返還」という方法を選択することには、有形無形のメリットがあるのです。