返還率アップのヒント(8)返還推進へのさらなる手段

犬や猫をアニマルシェルターに入れない方法のひとつは、迷子のペットを速やかに飼い主に返還することです。ペットの返還に力を入れている自治体の例として、米国フロリダ州ポートセントルーシー市とアーカンソー州カボット市の取り組みを、米国人道協会のレポート(https://humanepro.org/magazine/articles/ask-experts-return-owner-strategies)から見ています。

 

返還推進へのさらなる手段

その他のさまざまなシェルタープログラムが、返還率アップの取り組みを促進できます。そのいくつかは人員増や予算措置が必要かもしれませんが、結果的にリソースが節約されます。カボット市Cabot Animal Support Services(CASS)のMike Wheelerは、最初は予算が付かなくても、寄付などを用いて活動し実績が認められれば、そのうち予算が付くようになるといいます。

 

マイクロチップ装着の奨励

ポートセントルーシー市ではBryan Lloydの働きかけにより、犬の登録に関する条例が改正されました。避妊去勢手術済みでマイクロチップを装着した犬については初回登録時に5ドル支払えばよく、毎年の更新手数料が不要となりました。

 

柵の修理

CASSの動物管理員は、柵を修理するための工具を携行しています。このプログラムは“Fences for Fido”(「ワンちゃんの柵」)と呼ばれています。犬がしばしば逸走するようであれば、庭に飼い主を呼び、逸走防止策を一緒に考えます。状況に応じて、柵の設置や鍵の交換などを行います。

 

発見者による預かり

CASS は“First 48”というプログラムを実施しています。迷子のペットについての通報があった場合、発見者またはその近隣住民に、飼い主が見つかるまで最長48時間預かることができるか否かを尋ねます。多くの場合、住民はペットがシェルターに収容されることなく飼い主に返還されることを望むため、快く引き受けてもらえます。飼い主が見つかるまで、ケージやフードも提供します。飼い主が見つからなかった場合、預かっている人がそのまま里親になることが多いですし、そのまま譲渡に至ることもあります。

 

TNRの推進

野良猫のTNRの推進もまた、ペットの返還の推進をサポートします。「なぜ?」とお思いかもしれませんが、TNRは動物管理員の負担軽減につながるからです。具体的に言うと、野良猫の避妊去勢手術を実施することにより、繁殖行動に起因する迷惑行為(尿スプレーや徘徊など)が減りますし、また子猫が生まれないことにより、子猫に関する通報も減ります。その結果、動物管理員がペットの返還に費やす時間が生まれます。

 

(メモ)“Fido”とは「忠犬」という意味。一般的に飼い犬を指す呼称で、日本で言えば「ワンちゃん」や「ポチ」のようなもの…という認識でよいと思われます。