フロリダ大学などの研究チームは、フロリダ州のアニマルシェルターにおいて、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)のキャリアの猫がどう扱われているのかを調査しました※。その結果について見ています。
FeLV/FIV検査の方法
調査対象の139のシェルターのうち、81施設 (58%) が TNR(野良猫を捕獲し、避妊去勢手術ののちに捕獲場所に戻す活動)やRTF(シェルターに収容された野良猫に避妊去勢手術を施し、保護場所に戻す事業)対象の猫以外のすべての猫にFeLV 検査を実施し、63施設 (45%) がFIV検査も併用で実施していました。シェルターにおいて最も一般的に使用されていたFeLV/FIVの簡易検査キットはその両方を同時に検査できるタイプで、一部のシェルターではFeLV専用の検査キットを使用していたということになります(FIV専用の検査キットは市販されていません)。
細かい話をすると、FeLVとFIVの簡易検査は、それぞれ原理が異なります。FeLVの簡易検査は「抗原検査」で、ウイルスが持っている特有のタンパク質を検出する検査です。FIVの簡易検査は「抗体検査」で、ウイルスに感染した時に体内でつくられるタンパク質(=抗体)を検出する検査です。いずれも検体には血液を使用します。両方検査できる検査キットは、血液を滴下するための穴が2つあり、それぞれでFeLVとFIVを検査できます。
なおほとんどのシェルターは、簡易検査で陽性の結果が出た後の確認検査(PCRなど)を実施していませんでした。
シェルターの形態
FeLV/FIVの一般的な検査は民間のシェルターで最も一般的で、次いで自治体と委託契約している「みなし公営」シェルターが続き、公営のシェルターが最も少ないという結果になりました。
シェルターの立地
農村部(人口密度が1平方マイルあたり100人未満)のシェルターよりも、都市部(人口密度が1平方マイルあたり100人以上)のシェルターの方が、検査率が高い傾向がありました。
検査率が低いシェルターの傾向
以下のような特徴のシェルターは、検査率が低い傾向がありました。
・小規模のシェルター
・猫の収容が少ない(2019年に500匹未満)シェルター
・ライブリリース率(生きてシェルターを出る動物の割合)が70%未満のシェルター
※ Dezubiriaら(2023) “Animal shelter management of feline leukemia virus and feline immunodeficiency virus infections in cats”
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1003388/full