FeLV/FIV陽性の猫の処遇について考える その7

フロリダ大学などの研究チームは、フロリダ州のアニマルシェルターにおいて、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)のキャリアの猫がどう扱われているのかを調査しました※。その結果についての考察を見ていきましょう。

 

FeLV/FIVの検査

この研究により、以下のことが明らかになりました。

 

・フロリダ州の大多数のアニマルシェルターが、収容している少なくとも一部の猫にFeLV/FIVの検査を実施していた。

・TNR/RTF対象の猫よりも、譲渡や他団体への移送の対象の猫を検査したと回答したシェルターの方が多かった。

・検査実施数が少ないシェルターの特徴として、「猫の収容数が少ない」「農村部に立地」「公営」「ライブリリース率が低い」といったことがあげられた。

 

AAFP(米国猫獣医師会)のガイドラインによると、シェルターの収容猫に対するFeLV/FIVの検査は、個別飼育の猫については「任意」、集合飼育の猫については「推奨」、TNR対象の猫は「推奨しない」とされていますので、大多数のシェルターがガイドラインに基づきFeLV/FIVの検査を実施しているといえます。しかし一方、一部のシェルターでは検査が全く、もしくはあまり実施されていないことも明らかになりました。そういったシェルターの特徴には一定の傾向があり、FeLV/FIVの検査を実施するか否かの判断はシェルターのリソースに依存している可能性があることを示唆しています。

 

FeLV/FIV陽性の猫の安楽殺

ほとんどのシェルターでは、FeLV/FIV陽性の猫をライブリリースする努力をしています。AAFPのガイドラインにおいても、「FeLV/FIV陽性のみを理由とした安楽殺は推奨されない」とされています。にもかかわらず、一部のシェルターではFeLV/FIV陽性の猫の安楽殺が定例的に行われています。そういったシェルターにも、「猫の収容数が少ない」「農村部に立地」「公営」「ライブリリース率が低い」といった傾向がありました。

シェルターにおいては、FIV陽性の猫はFeLV陽性の猫よりもライブリリースの可能性が高く、定例的な安楽殺の可能性も低い傾向がありました。その要因としては、

 

・FIVキャリアであっても、発症せず通常の寿命を全うする猫は珍しくない

・FIVは猫同士でけんかをしなければ、感染が広がる可能性が低い

 

といったことがあげられます。対してFeLVキャリアの猫は、特にPCR検査によってウイルス量が高いと判定された場合、平均寿命が短くなります。しかしFeLV キャリアであっても、予想に反して何年も生きる猫もいることから、一概に言い切れないところはあります。 

 

※ Dezubiriaら(2023) “Animal shelter management of feline leukemia virus and feline immunodeficiency virus infections in cats”

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1003388/full