FeLV/FIV陽性の猫の処遇について考える その8

フロリダ大学などの研究チームは、フロリダ州のアニマルシェルターにおいて、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)のキャリアの猫がどう扱われているのかを調査しました※。その結果についての考察を見ています。

 

FeLV/FIV陽性猫の譲渡

AAFP(米国猫獣医師会)は、FeLV/FIV陽性の猫であっても、他の猫と別に収容し陽性の旨を適切に情報提供されている限り、非感染の猫と同様に譲渡することを推奨しています。またAAFPはFeLV/FIV陽性の猫の州間移送や譲渡を禁止する規制は医学的エビデンスに裏付けられていないと非難しています。FeLV/FIV陽性の猫の譲渡を禁止する規制はほとんどの州で解除されていますが、一部の州ではFeLV陽性の猫の譲渡が禁止されています。

アニマルシェルターにおいては、FIV陽性の猫については譲渡先の家庭について特に制限なく譲渡されていました。このことはシェルターが、FIVは仲の良い猫同士であれば感染リスクを無視することができ、陽性の猫と陰性の猫が長期間同居することができるということを理解していることを示しています。

FeLV陽性の猫の譲渡は、先住猫がいない、もしくは先住猫がFeLV陽性の家庭に制限されていました。FeLVは、長期にわたる濃厚接触のある猫の間でより感染しやすくなります。ただし、成猫にはある程度の自然免疫があり、ワクチンも利用可能ですが、家庭内での感染リスクは依然として不明瞭です。

 

FeLV/FIV陽性の猫の移送

フロリダ州のシェルターにおいては、FeLV/FIV陽性の猫を譲渡促進のため他団体に移送したり、終生飼育を前提とした「サンクチュアリ」に移送することも一般的に行われていました。

確かにシェルターのリソースが限られている場合、他のシェルターへの移送は有効な場合もあります。しかしいったんシェルターに収容された猫を他のシェルターに移送することは猫にストレスを与え、場合によっては譲渡が遅れる懸念があるため、できるだけ移送に頼ることなく効率的に譲渡につなげるような仕組み作りが望まれます。さらに、シェルターは極力猫を収容しないことを目指し、飼い主が自ら新しい飼い主を探したり、地域住民が野良猫を直接保護したりすることを支援することもできます。

「サンクチュアリ」への猫の移送は、約3分の1のシェルターで日常的に行われていました。この手段はFeLV/FIV陽性の猫をすぐにライブリリースすることができますが、サンクチュアリは多数の猫を集合飼育する施設であり、ストレスや感染症の蔓延が懸念されます。特にFeLV/FIV陽性で免疫不全の素因を持つ猫にとっては理想の環境とは言い難いといえます。実際に、FeLV/FIVのキャリアの猫の長期生存率は、サンクチュアリよりもストレスが少ない家庭環境の方が高いといわれています。

 

※ Dezubiriaら(2023) “Animal shelter management of feline leukemia virus and feline immunodeficiency virus infections in cats”

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1003388/full