FeLV/FIV陽性のの処遇について考える その10

フロリダ大学などの研究チームは、フロリダ州のアニマルシェルターにおいて、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)のキャリアの猫がどう扱われているのかを調査しました※。その報告についてまとめてみましょう。

 

結論

この調査により、フロリダ州のすべてのシェルターがFeLV/FIV陽性の猫の処遇に関するAAFP(米国猫獣医師会)のガイドラインを完全に遵守しているとは言い難いことが判明しました。とはいえ、ほとんどのシェルターは少なくとも一部の猫にスクリーニング検査を行い、陽性と判定された猫の少なくとも一部にはライブリリースの選択肢を用意していました。すべてのシェルターにおいてFeLV/FIVの検査がAAFPのガイドラインに基づき適切に実施されるためには、以下のような問題点に対する、シェルターへの技術的支援が必要と考えられます。

 

FeLV/FIV検査にかかるコスト

FeLVやFIVの簡易検査キットは決して安価ではありません。受入れた猫のすべてに簡易検査を実施することは、シェルターにとって大きな経済的負担となります。また検査のためには採血が必要で、獣医師や獣医看護師の人役もかかります。しかしAAFPは、シェルターで扱う猫のすべてにFeLV/FIV検査を実施することを奨励しているわけではありません。譲渡対象の猫や、集合飼育の猫には検査が推奨されますが、単独飼育の猫には「任意」、TNR/RTF対象の猫には「推奨しない」とされています。メリハリの効いた検査を実施することにより、費用対効果と実施効果の両立を図ることができます。

 

他の猫への感染リスクの軽減

FeLVやFIVは、猫を同居させなければ感染のリスクはほとんどありません。つまり陽性または未検査の猫を陰性の猫と同居させない、またそれらの猫の体液が直接触れた物品を洗浄消毒するといった対策を講じることにより、感染リスクを軽減することができます。

 

譲渡プログラムの強化

FIV陽性の猫の譲渡については理解が進みつつありますが、FeLV陽性の猫の譲渡はまだまだ一般的ではありません。FeLV/FIV陽性の猫の譲渡についてのノウハウを、例えばAustin Pets Alive!のような先進事例から学び実践していくことが望まれます。

 

ケアの引継ぎ

FeLVやFIVに感染したからといって、必ず発症するとは限りません。しかし一定の発症リスクがあることも事実ですし、発症した際の合併症も気になります。そのため、FeLV/FIV陽性の猫には一生涯のケアが必要です。譲渡の際には医療記録を新しい飼い主に確実に引継ぎ、かかりつけ医によるケアにつなげていく必要があります。

 

※ Dezubiriaら(2023) “Animal shelter management of feline leukemia virus and feline immunodeficiency virus infections in cats”

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.1003388/full