野良猫の管理について再考する その2

HurleyとLevy (2022)※の“Rethinking the Animal Shelter’s Role in Free-Roaming Cat Management”(野良猫の管理におけるアニマルシェルターの役割を再考する)という論文には、野良猫の管理方法として5つの方法が示されています。各論に入る前に、それぞれについて簡単に見ておくことにしましょう。

 

シェルターが関与しない(non-shelter-based)方法

 

Trap-Neuter-Return(TNR)

野良猫を捕獲し、避妊去勢手術ののちに捕獲場所に戻す手法で、民間のボランティア活動として行われるのが一般的です。捕獲器やスタッフ、手術場所などシェルターが支援することもありますが、必ずしもシェルターを必要とする活動ではありません。

 

lethal and non-lethal cat control methods(致死的および非致死的な駆除事業)

一定の場所から野良猫をすべて取り除く手法です。この事業にはそれなりの費用と人手が必要で、時には薬殺や銃撃などの致死的措置を伴うため、行政による事業もしくは委託事業として行われます。非致死的な手法を用いる際にはシェルターの協力が必要になることもありますが、シェルターの関与は必須ではありません。

 

シェルターが関与する(shelter-based)方法

 

removal(収容)

保護されたすべての野良猫をシェルターに入れるという考え方です。受入れた猫は通常のシェルターの流れに従い、飼い主への返還、譲渡、移送、安楽殺等が行われます。

 

sterilization and return(避妊去勢手術ののちのリターン)

シェルターに受け入れた野良猫に避妊去勢手術を施し、保護場所に戻すことを指します。この事業はしばしばRTFやSNRと呼ばれます。当然ですが、シェルターには避妊去勢手術を実施するリソースが必要です。

 

leaving cats(放置)

シェルターの収容能力に余裕がなく、避妊去勢手術のためのリソースもない場合、必然的に「何もしない」ということになります。ここでいう「何もしない」というのは、言い換えれば「シェルターに野良猫を入れない」ということです。もちろん本当に何もしないわけにはいきませんから、民間のTNR活動を支援することで野良猫の数を減らしていくことや、野良猫による被害軽減策を講じることにより地域住民の不満を解消したりすることは必要になります。

 

ちなみに日本ではかつて「removal(収容)」の手法がとられてきましたが、現在では「殺処分ゼロ」の観点から、「leaving cats(放置)」の手法にシフトしています。

 

※ Frontiers in Veterinary Science | www.frontiersin.org March 2022 | Volume 9 | Article 847081