野良猫の管理について再考する その4

HurleyとLevy (2022)※の“Rethinking the Animal Shelter’s Role in Free-Roaming Cat Management”(野良猫の管理におけるアニマルシェルターの役割を再考する)という論文は、シェルターが関与しない野良猫の管理方法として「TNR活動」「駆除事業」の2つをあげています。

 

野良猫の駆除事業

生態系の保全、特に海鳥の繁殖地や固有種の保護を目的に、外来種である野良猫の駆除が一部の離島で実施されています。野良猫の駆除事業には、薬殺や銃殺などによる致死的(lethal)方法と、生け捕りにして他の土地に移住させる非致死的(non-lethal)方法がありますが、莫大な費用と労力が必要なため、国家または地方自治体の事業として実施されます。

 

致死的方法

致死的方法による野良猫の駆除は、主にオーストラリアの離島で実施されています。論文では最も「安上り」だったフォール島のケースと、最も費用と期間を要したマッコーリー島のケースが紹介されています。

 

フォール島(Faure Island):海鳥の繁殖地として重要なフォール島(58平方キロメートル)において、40頭の野良猫を駆除するのに3週間で26,000ドルを費やしました。

 

マッコーリー島(Macquarie Island):マッコーリー島(128平方キロメートル)はユネスコの世界自然遺産で、ペンギンやアホウドリなどの繁殖地としても知られています。この島から761頭の野良猫を駆除するのに、22年で250万ドルを費やしました。

 

また、有袋類や鳥類の生息地として知られるカンガルー島(4,405平方キロメートル)から1,629頭の野良猫を駆除する計画に至っては、10年間で1,500万ドルの費用を見込んでいます。

 

非致死的方法

野良猫の非致死的な駆除は、米国カリフォルニア州のサンニコラス島(57平方キロメートル)で実施されました。サンニコラス島はアメリカオオセグロカモメやアオノドヒメウの繁殖地で、また固有種ワキモンユタトカゲの生息地でもあります。この島は米国海軍が管理していて、野良猫の駆除も海軍によって実施されました。島で生け捕りにされた野良猫は、本土のサンディエゴ郡ラモナに準備された新たな生息地に移されました。66頭の猫を移住させるのに、3年間で290万ドルを費やしました。

 

駆除事業の欠点

ご覧になってお分かりのとおり、野良猫の駆除事業には莫大な費用がかかります。また野良猫を根絶できなかった場合、定期的なモニタリングや再捕獲といった追加の費用がかかります。また上記の例はいずれも、新たな個体の流入がない離島である点も重要です。さらに致死的方法はもちろん、非致死的方法にしても野良猫の移住には動物福祉上の問題があります。

 

※ Frontiers in Veterinary Science | www.frontiersin.org March 2022 | Volume 9 | Article 847081