野良猫の管理について再考する その19

HurleyとLevy (2022)※の“Rethinking the Animal Shelter’s Role in Free-Roaming Cat Management”(野良猫の管理におけるアニマルシェルターの役割を再考する)という論文で述べられている、シェルターが関与する(shelter-based)野良猫の管理手法の三つ目は、野良猫をそのままにしておく(leaving cats in place)というものです。

 

野良猫をそのままにしておくメリット ※続き

 

飼い主への返還の推進 ※続き

 

シェルターは敷居が高い?

Weissら (2012)は、迷子になった飼い猫を飼い主が見つけ出す確率と、飼い主の所得に相関関係があることを指摘しています。具体的には、年収が30,000 ドル未満の人が迷子の猫を見つける確率は、年入が 50,000 ドルを超える人に比べて10分の1にすぎないというのです。この研究は、低所得者は「迷子の猫をシェルターで探す」という発想に乏しいことを示唆しています。その要因として、自家用車の所有状況、英語の理解度、返還手数料の負担に加え、単なる知識不足などがあげられています。 

 

迷い猫返還の方策

以上のことを考慮すると、迷い猫を発見者がシェルターに持ち込むことなく、飼い主への返還を支援することがより公平で、より効果的なアプローチであるといえます。論文は具体的にこのような方策をあげています。

 

・シェルターの迷子発見ウェブサイトに猫の写真を掲載する。

・発見された猫にマイクロチップをスキャンするサービスを提供する。

・発見者が地元のソーシャルメディアに投稿することを支援する。

・発見場所の近所の人に声をかける。

・発見場所の近所に看板を掲示する。

・“is this your cat”(あなたが探している猫です) と書かれた紙の首輪を猫につけることを奨励する。

・発見者に、庭に迷い込んだ健康な猫に餌を与えないようアドバイスする(諦めて家に帰る)。

 

シェルターに収容すべき場合

ただし次のような場合においては、迷い猫をシェルターに収容しケアや飼い主探しをすべきであるとしています。

 

・猫が病気やけがをしている

・ひどく痩せている

・病気やけがとまではいかないが、状態が悪い

・保護現場周辺での活動の甲斐なく、飼い主が見つからなかった場合、もしくは近所の一時預かり人(caretaker)が見つからなかった場合

 

※ Frontiers in Veterinary Science | www.frontiersin.org March 2022 | Volume 9 | Article 847081