野良猫の管理について再考する その20

HurleyとLevy (2022)※の“Rethinking the Animal Shelter’s Role in Free-Roaming Cat Management”(野良猫の管理におけるアニマルシェルターの役割を再考する)という論文から、シェルターが関与する(shelter-based)野良猫の管理手法、すなわち「収容」「避妊去勢手術ののちのリターン」「猫をそのままにする」の3つについて見てきましたが、シェルターはこのうちのどれかにこだわるのではなく、適切に使い分けるべきとしています。

手法の使い分けにあたり、緊急ではない状況(例えば猫に病気やけががない、または差し迫った危険にさらされていたり、そのおそれがない)においては、それぞれの猫の状況と発見場所の評価を行うべきです。

 

野良猫は「そのまま」または「リターン」が基本

ほとんどの野良猫は、地元ボランティアによるTNRや苦情者による二次被害防止策などといった地域のリソースに委ねるか、シェルターに収容するにしても避妊去勢手術の後にリターンすべきです。ただし飼い主により遺棄されたことが明らかであるなど、飼い猫の可能性が極めて高い場合や、病気やけが、幼齢などのリスクを抱える野良猫については、例外を設けるべきです。

 

野良猫の除去

固有種など重要な野生生物が捕食されるおそれなど、野良猫による重大な懸念がある場合には、一般的に猫をリターンすることなく、環境から除去すべきです。その場合においても、シェルターと野生生物保護管理者が連携し、野生生物と野良猫の両方を保護することを目指すべきです。野生生物の保護区として特別に管理されている土地であれば野良猫を除去し再侵入を防止することは比較的容易ですが、問題となるのは正式な保護区ではないが、野良猫による野生生物への危害が懸念される土地の場合です。この場合、シェルターと野生生物保護管理者が共同し野生生物に対する危害の分析や緩和策を実行していく必要があります。これは必ずしも野良猫の除去のみを意味するものではありませんが、仮に野良猫の除去を選択した場合、集中的かつ持続的な除去作業といった個体数減少の方策と、新たな個体の流入や遺棄の防止などといった個体数を増やさないための方策を組み合わせて実施する必要があります。

 

「管理された収容」

野良猫に限らず、動物をいきなり受け入れるのではなく、“Managed Admissions”(管理された収容)や“Coordinated Care”(調整されたケア)と呼ばれる対応を実施するシェルターが増えていると論文はいいます。これは動物を持ち込もうとする住民にあらかじめ電話やWebフォームでシェルターに連絡してもらうことにより、情報収集のうえ動物の処遇について決定しようとするものです。その結果、シェルターへの収容が最善であると判断されればその動物を連れてきてもらいますし、そうでない場合には代替案を提案します。

 

※ Frontiers in Veterinary Science | www.frontiersin.org March 2022 | Volume 9 | Article 847081