米国のシェルター統計(2) IODのデータ その1

米国のShelter Animals Count(SAC)が運用しているアニマルシェルター統計データベースである、Intake & Outcome Database (IOD)※で扱うデータについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

IODのデータ

IODを運用しているSACは民間の非営利団体ですから、全てのシェルターのデータを収集する権限はありません。そのため、SACはIODへの参加を全米のシェルターに呼びかけています。その際に用語の定義があいまいだと統計の正確性が損なわれるため、各入力項目については厳密に定義されています。

 

データの公開

収集されたデータはShelter Animals CountのホームページのThe National Databaseで公開されています(https://www.shelteranimalscount.org/)が、このデータは国や地域レベルの集計結果として公開されています。つまり、シェルター毎の情報は公開されません。各シェルターはIODを参照し、国や地域の傾向を自らのシェルターと比較することで、運営上の問題点などを検証するためのツールとして用いることができます。

 

対象とする動物種

IODが運用され始めた当初は対象となる動物種は犬と猫だけでしたが、2021年のアップデートの際にその他多くの動物種が対象になりました。シェルターによっても異なりますが、シェルターが扱う動物種は犬や猫に限らないからです。特に米国ではウサギや馬も人気のペットですし、その他多様な動物種がシェルターに持ち込まれる可能性があります。現在IODが統計の対象としている動物種は「犬」「猫」「ウサギ」「馬」のほか次のとおりです。

 

「小型哺乳類(Small Mammals)」 モルモット、ハムスター、ラットなど

「家畜(Farm Animals)」 豚、ラマ、牛など、馬以外の有蹄類家畜

「鳥類(Birds)」 ニワトリ、ハト、オウムなどの飼い鳥

「爬虫類と両生類(Reptiles and Amphibians)」 カメ、ヘビ、イグアナなど、ペットの爬虫類と両生類

 

生きた動物のみを対象(LIVE admissions only)

シェルターには瀕死の動物が運び込まれてくることもあります。そういった場合、シェルターに到着したときにはすでに亡くなっていることも珍しくはありません。また、場合によっては動物の死体が運び込まれることもあります。そういった「死んでいる」動物についてのデータは、各シェルターの業務実績や地域の動物動態の把握といった観点からは重要かもしれません。しかしIODは、「生きて」シェルターに入った動物がどのような「結果」に至ったかを追跡するデータベースですので、各機関に引取られた際に既に死亡していた動物については統計の対象とはしていません。

 

※https://www.shelteranimalscount.org/wp-content/uploads/2022/07/SAC_IntakeandOutcomeDatabase_IOD_070522.pdf