米国の動物保護統計(4)獣医療サービス その1

米国のShelter Animals Countが運用している、社会奉仕活動としての動物保護活動に関するデータベースであるCommunity Services Databaseベータ版(CSD)※であげられている最初の項目の2番目はVETERINARY SERVICES(獣医療サービス)です。 

 

獣医療サービス

通常であれば、ペットの獣医療はかかりつけの動物病院で実施されます。しかしいわゆる「野良」動物や、低所得者のペットなどについては、十分な獣医療が受けられない可能性があります。特に米国においては獣医療費の高騰が問題となっていて、生活困窮者でないいわゆる「中流」とされる人々も、動物病院にかかることを躊躇する事態になっています。しかし当の動物たちにとってはそんなことは関係ありません。動物福祉や公衆衛生の観点からは、飼い主の経済状況がどうであれ、ペットには最低限の獣医療を提供する必要があります。そのため、行政や非営利団体が無料または低廉な獣医療サービスを提供しているわけです。

 

Microchipping and/or Collar with ID tags(マイクロチップや個体識別情報付きの首輪の装着)

迷子のペットを速やかに飼い主に返還するためには、ペットにマイクロチップや迷子札を装着することは非常に有効です。ただしそれぞれに弱点もありますので、できれば両方装着しておきたいところです。米国の自治体によっては、無料でマイクロチップを装着するサービスを実施しているところもあります。マイクロチップの装着はともかく首輪の装着は獣医療行為ではありませんが、CSDでは同じくくりで計上することとされています。CSDではこう定義されています。

 

Animals receiving insertion of microchip and/or application of long-wear collar with identification, as well as registering microchip/ recording identification. 

マイクロチップの挿入および/または個体識別情報付きの長期着用首輪の装着を受け、さらにマイクロチップの登録/個体識別情報の記録を受けた動物

 

Spay/Neuter for Owned Animals(ペットの避妊去勢手術)

避妊去勢手術の普及は個体識別措置の普及とともに、シェルターに動物を入れないための重要施策のひとつです。米国のアニマルシェルターの中には、経済的理由や近くに動物病院がないなど、ペットの避妊去勢手術が困難な飼い主に対して、シェルターのスペイクリニックや出張手術などのサービスを実施しているところもあります。また手術のためのリソースを有していないシェルターや団体では、一般の動物病院で実施した避妊去勢手術に対して助成を行っているところもあります。こういった、動物保護活動の一環として非営利で実施されている避妊去勢手術を総称して“Spay/Neuter Program”と呼ぶことがあります。

なお野良猫に避妊去勢手術を施し捕獲場所に戻すTNRは、ここではなく「フィールドサービス」として「TNR」に計上されます。(続く)

 

※ https://www.shelteranimalscount.org/wp-content/uploads/2022/07/SACCommunityServiceDatabase_CSD_R070522.pdf