米国における、“Community cat”いわゆる「野良猫」の「人道的」な個体数管理の手法は、「保護からの譲渡」または「避妊去勢手術ののちのリターン」の2つに分かれます。しかし譲渡に向かず、かつリターンできない野良猫についてはその多くが殺処分されているのが現状です。
そういった野良猫を人道的に処遇する方法として注目されているのが“Barn Cat Program”(納屋猫プログラム)です。この方法は米国においても最先端とされあまり知られていませんが、多くのシェルター等で取り入れられつつあります。Austin Pets Alive!(APA!)のMonica Frendenによる “Starting a Barn Cat Program in your Community”(以下「ハンドブック」)※から、“Barn Cat Program”について見ていくことにしましょう。
“Barn Cat Program”とは
“Barn Cat Program”について、「ハンドブック」ではこう定義されています。
Essentially a Barn Cat Program is a program in which shelters or rescues attempt to relocate these cats to different barns, warehouses or other privately owned areas that provide a safe area for the cats to roam that includes shelter, food and water.
Barn Cat Programとは基本的に、シェルターや保護団体がこれらの猫を、隠れ家、フード、水を備えた、猫が歩き回ることができる安全な場所を提供する別の納屋、倉庫、その他の私有地に移そうとするプログラムです。(p4)
プログラムの背景
このプログラムの対象になる“these cats”とは、このような猫のことです。
The cats who cannot be returned and are not suited for traditional adoption are the most at risk to be euthanized and often have no other option than relocation once they are impounded.
リターンできず、通常の譲渡に向かない猫は、最も安楽殺の危険にさらされていて、一旦収容されてしまうと多くの場合、移住以外に選択肢がありません。(p4)
つまり譲渡不適でリターンできない野良猫については、安楽殺か強制移住の2者択一が求められるという現状があります。そうではない、真に人道的な選択肢として登場したのがBarn Cat Programというわけです。
Barn Cat Programは譲渡の一形態
ここで注目していただきたいのが、“are not suited for traditional adoption”(通常の譲渡に向かない)という表現です。つまりBarn Cat Programは新たなadoption(譲渡)の一形態と位置づけられるわけです。具体的に言うと、譲渡不適の野良猫を家庭動物としてではなく、私有地における放し飼いを前提に、納屋や倉庫などの「ネズミ除け」のために譲渡するという事業です。それは「譲渡」とはいえ「強制移住」に限りなく近いため、猫を新しい環境になじませるための方策が必要になります。
※https://www.maddiesfund.org/assets/documents/Institute/APA!%20Barn%20Cat%20Handbook.pdf