家庭動物としての譲渡に向かない野良猫を「納屋猫」として譲渡する“Barn Cat Program”について、Austin Pets Alive!(APA!)のMonica Frendenによる“Starting a Barn Cat Program in your Community”(以下「ハンドブック」)※から見ています。
Monica’s Lessons(モニカから一言)
「ハンドブック」の最後は、著者の雑感で締めくくられています。その内容について簡単にご紹介します。
Feral cats are very difficult to shelter(野良猫の保護は本当に難しい) (p28)
動物管理機関に収容された野良猫は、感染症やストレスの観点から、早く引き出すほうが望ましいといえます。人馴れしない野良猫は触ることが難しいため、継続的な獣医療ケアが困難です。そのため、初期の処置が重要となります。例えば、
・「猫かぜ」予防のため、避妊去勢手術の際にコンベニア(長期作用型の抗生物質)を投与する。また譲渡後であっても、猫かぜの兆候が見られれば抗生物質の処方や、場合によってはシェルターが引取り治療を行う
・動物管理機関でカリシウイルス感染症の発生が見られた場合、避妊去勢手術の際に全頭の口腔検査を行い、口内炎があれば直ちに治療を開始する
・動物管理機関で汎白血球減少症の発生が確認された場合、全頭にワクチンを接種し2週間隔離する
Feral Cats Are Messy(野良猫は汚い)(p28)
野良猫を収容したケージは汚れやすいので、寝具は頻繁に交換する必要があります。またトイレの猫砂は砂状の物よりも、ペレット状の物の方が汚れが少ないのでお勧めです。餌皿や水皿が大きすぎると清掃が大変なため、使用しない方がよいでしょう。
Who Stays and Who Doesn’t(定着する猫としない猫)(p28-29)
当然ですが、人馴れした猫や子猫は新しい環境になじみやすいです(のらぬこ注:しつこいようですが、このような猫は「納屋猫」ではなく、家庭動物としての譲渡が望ましいと個人的には思います)。対して、大きなボス猫(huge alpha toms)は新しい環境になじみにくいので、魅惑的な住処や食事など、定着のための工夫が必要です。また、隣人がより良い住処や食事を与えていれば、猫がそちらに行ってしまうのは世の常です。「納屋猫」が隣人に「引取られた」とか「盗まれた」といったことは珍しくありません。
Match Homes and Cats(マッチングの重要性)(p29)
「納屋猫」と新しい飼養環境のマッチングが重要です。例えば、
・酪農家の場合、猫の導入はネズミ除けに有効ですが、猫が畜舎に入ってこられると困ります。こういった現場では、猫が夜間に周囲をうろつくだけでよいので、全く人馴れしていない「真の」野良猫を「納屋猫」として譲渡するのが有効です。
・ネズミ除けと同時に、従業員や顧客の癒しも求めているような工場や店舗の場合、ある程度人馴れした「納屋猫」が望ましいといえます。そういった現場には特別なケアが必要な猫や、人馴れしているが何らかの理由で家庭動物に向かない猫を「納屋猫」として譲渡するとよいでしょう。
※https://www.maddiesfund.org/assets/documents/Institute/APA!%20Barn%20Cat%20Handbook.pdf