「中間者」の猫 (7) 「代替的生活様式」

英国の猫保護団体であるInternational Cat Care(ICC)は、人間との生活にストレスを感じているため家庭動物としての譲渡に向かない“inbetweener”(中間者)と呼ばれる猫を特別なプログラムで譲渡することを提唱しています。「中間者」の猫の処遇について、ICCのリーフレット“Identifying solutions for ‘inbetweener’ cats”※から見ています。

 

“Alternative lifestyles”(「代替的生活様式」) (p5)

「中間者」の猫を農場や厩舎などで放し飼いにすることを、ICCは“Alternative lifestyles”(「代替的生活様式」)と呼んでいます。ほかに“outlet cats”(外猫)、“farm cats”(農場猫)、“working/blue collar cats”(仕事猫)などと呼ばれることもあります。米国でいう “barn cats”(納屋猫)も同義です。

 

“Alternative lifestyles”に必要な要素 (p5)

“Alternative lifestyles”は猫の放し飼いではありますが、最低限これらの要素が必要です。

 

・定期的な給餌、給水、トイレの世話

・風雨をしのぐことができる退避場所

・(定着後に)自由に外出できる環境

 

“Alternative lifestyles”の世話人 (p6)

“Alternative lifestyles”は米国の“Barn Cat Program”と同様、農場などに譲渡するという形を取ります。その場合、オーナーや管理人などが飼い主(ICCは「世話人」(caregiver)と呼んでいます)になるのが一般的ですが、地域で世話をする場合もあります。こういったいわゆる「地域猫」の場合においても、1~2名の正式な世話人を決めておく必要があります。世話人になろうとする人については事前登録が望ましいですが、その人たちでコミュニティを作っておくと、有意義な情報交換が行えます。

 

Health care for an inbetweener with an outdoor lifestyle(屋外の中間者の健康管理) (p5-6)

「中間者」の猫は取り扱いが難しいので、継続的な健康管理が困難です。またけがや病気の際にも、可能な処置には限界があります。「中間者」の世話人になろうとする人は、まずそこを認識する必要があります。「中間者」の猫に何らかの処置が必要な場合、TNRで用いられる捕獲器を用いて捕獲することになりますが、猫を何度も捕獲することは難しいため、1回で完結するような処置しかできません。例えば全身麻酔下で外科処置を行い、長時間作用型の鎮痛薬や抗生物質を投与することになります(TNRの際の外科処置と考え方は同じです)。軽症の場合は餌に薬物を混入することで治療が可能な場合もあります。

「中間者」の猫を治療のために監禁したり、長期間入院させることは苦痛を伴うため、そのような治療が必要な場合は動物福祉の観点から安楽殺も検討されます。

 

※ https://icatcare.org/app/uploads/2020/02/final-inbetweeners-decision-doc.pdf