スペイクリニックの安全性について考える(4)スペイクリニックが安全な理由

犬や猫の避妊去勢手術に特化したいわゆる「スペイクリニック」の安全性について、Levyら(2017)の“Perioperative mortality in cats and dogs undergoing spay or castration at a high-volume clinic” ※1から見ていきましたが、論文の著者のインタビュー記事※2から、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

論文の概要

この研究は、タンパベイ人道協会が運営するHQHVSN(高品質大量避妊去勢手術)クリニックにおいて、犬や猫の周術期死亡率を調査したもので、このクリニックの周術期死亡率は0.03%で、人間の子宮摘出術の周術期死亡率(0.01%)に近い数字が示されました。

この論文の筆頭著者であるDr. Julie Levy(フロリダ大学)は、“This is a stunning validation of the expertise and skill of spay/neuter veterinarians,”(これは避妊去勢獣医師の専門知識と技術の驚くべき検証だ)とコメントしています。また共著者のDr. Karla Bard(タンパベイ人道協会)は“These findings confirm the proficiency of teams specializing in a limited spectrum of spay/neuter procedures,”(これらの結果は、特定された手技による避妊去勢手術に特化したチームの熟練度を裏付けるものだ)とコメントしています。

 

技術と経験

その要因について、記事はこうまとめています。

 

The research also echoed similar findings from the human literature about the importance of specialized skills and volume of practice in achieving high surgical success rates.

この研究はまた、高い手術成功率を達成するためには、専門的な技術と経験数が重要であるという、人間の文献から得られた同様の知見とも呼応している。

 

つまり、特定の術式に特化しそれを繰り返すということが、技術の習熟につながっているといえます。Dr. Levyもそれは「驚くことではない」(unsurprising)と述べています。

 

連続性

しかしDr. Levyは、それだけではないといいます。ここで指摘されているのは、手術の「連続性」です。彼女はこういいます。

 

“Repeating specific procedures without interruption to perform other procedures is common in high-quality, high-volume spay/neuter clinics,”

「他の手技を行うために中断することなく特定の手技を繰り返すことは、HQHVSNクリニックでは一般的です」

 

“That lack of interruption is itself an independent predictor of reduced mortality in human surgery.”

「その連続性そのものが、人間の手術における死亡率減少の独立した予測因子とされています」

 

つまり、同じ手技の手術を中断することなく繰り返すこともまた、スペイクリニックの安全性を高めているのです。

 

※1 https://doi.org/10.1016/j.tvjl.2017.05.013

 

※2 https://sheltermedicine.vetmed.ufl.edu/2018/04/18/study-are-high-quality-high-volume-spay-neuter-clinics-safe/