災害対策としての避妊去勢手術(3) 避妊去勢手術のメリット その1

犬や猫の避妊去勢手術は平時におけるペットの災害対策として重要であると述べましたが、避妊去勢手術にはどのようなメリットがあるのかについておさらいしておきたいと思います。

環境省のパンフレット「ふやさないのも愛」※(平成22年)にはこう記載されています。

 

メスの不妊手術(卵巣と子宮の除去)

○望まない妊娠がなくなる。

○卵巣、子宮の病気のリスクがなくなる。

○性ホルモンに関係する乳腺腫瘍などの病気のリスクが低くなる。

○発情期特有の困った行動がなくなる。(猫では大きな鳴き声、トイレ以外での排尿、外に出たがるなど。犬では出血で部屋をよごす、外に出たがる、飼い主のいうことを聞かないなど。)

○様々なリスクが低減することにより、寿命が延びる。

 

オスの去勢手術(精巣の除去)

○望まない交尾がなくなる。

○精巣の病気や前立腺肥大(犬)などの病気のリスクが低くなる。

○メスへの興味によるストレスが軽くなる。

○猫では発情期特有の困った行動がなくなる。(大きな鳴き声、マーキング、外に出たがる、ケンカなど。)

○オス同士の競争による攻撃性が低下する。

○猫エイズなどケンカや交尾で感染する病気のリスクが低くなる。

○様々なリスクが低減することにより、寿命が延びる。

 

もちろん避妊去勢手術は外科手術ですから、手術に伴うリスクはあります。また避妊去勢された動物は太りやすいといわれていますが、食事の管理に気を遣うことで予防できます。

 

野外繁殖の防止

犬や猫の避妊去勢手術には上記のようにさまざまなメリットがありますが、最大のメリットは「望まない妊娠の防止」です。災害時におけるペットに関わる最大のリスクは、ペットの逸走による飼い主の心の問題と野外繁殖であることは以前に述べました。飼い主が平常時に避妊去勢手術を確実に履行していれば、少なくとも後者のリスクを回避することができます。放浪ペットの野外繁殖は単に野良犬や野良猫が増えるというだけではなく、その結果、生活環境の悪化や公衆衛生の問題、また生態系の破壊につながるおそれがあります。その対策のため、自治体職員が駆り出される、つまり行政コストが発生することになります。「望まない妊娠の防止」というのは決して飼い主の個人的事項ではなく、地域全体に対する飼い主としての責務であると言っても言い過ぎではないと私は考えています。