「法的に正しい」ペットの飼い方(1) 飼い主の「6つの責務」

日本はいわゆる「法治国家」です。法治国家とは、ものすごく簡単に言うと「法律をルールにして動いている国」を指します。特に公権力の行使に際しては、必ず法律の規定に基づかなければなりません。そのため、じつに様々な事柄が法律で定められています。

動物の飼い方についても例外ではなく、法律で規定されていると言うと、びっくりされる方もいるかもしれません。しかし法律で定めておかないと、動物を不適切に飼っている人に対して公務員が職権として指導することができないのです。これは法治国家ゆえのことです。そこで、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号、以下「法」とする)で定められている「法的に正しい」動物の飼い方について、一緒に学んでいきましょう。

 

動物の所有者又は占有者の責務等

動物の所有者又は占有者の責務については、法第7条でこう定められています。所有者と占有者とでは、課せられる責務が異なるので注意が必要です。なお「占有者」とは、動物の法的な所有権を有していないものの、実質的にその動物を管理している人を指します。

 

第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。この場合において、その飼養し、又は保管する動物について第七項の基準が定められたときは、動物の飼養及び保管については、当該基準によるものとする。

2 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めなければならない。

3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。

5 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

6 動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない。

7 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。

 

飼い主の「6つの責務」

これらをまとめると、動物愛護法で定める飼い主の責務は「健康と安全の保持と迷惑防止」「動物に起因する感染症の知識と予防」「逸走防止」「終生飼養」「繁殖制限」「所有明示」といえます。

 

「努力義務」

これらの条文は「努めなければならない」で終わっています。これはいわゆる「努力義務」で、これを守らなかったからといって処罰を受けるといったものではありません。国が示した規範といってよいでしょう。ただし努力義務の規定であっても、それに反する行為は行政指導の対象になりえるということは覚えておいてください。