動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号、以下「法」とする)で定められている「法的に正しい」動物の飼い方について見ています。
繁殖制限
法第7条第5項には、飼い主の責務として動物の繁殖制限が定められています。
5 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
犬や猫については過剰繁殖が生活安全や環境保全の観点から特に問題となりますので、法第37条で別に定められています。
第三十七条 犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならない。
2 都道府県等は、第三十五条第一項本文の規定による犬又は猫の引取り等に際して、前項に規定する措置が適切になされるよう、必要な指導及び助言を行うように努めなければならない。
法第37条の規定は努力義務ではない点に注意してください。条件付きではありますが、犬や猫の繁殖制限は所有者の義務とされています。第2項の規定は、自治体が子犬や子猫を引取る際に母親の避妊手術を条件にするなど、繁殖制限によりこれ以上繁殖させないよう飼い主に指導するという規定です。
繁殖制限の大切さ
飼育動物、とくに犬や猫の過剰繁殖により個体数が増加すると、飼い主によるケアが行き届かずに動物の福祉が低下するおそれがあります。最悪の場合、自治体が引取らざるを得ず、結果的に殺処分という可能性もあります。また過剰繁殖した動物が逸走すると住民の安全や生活環境の悪化を招くおそれがあります。逸走した動物が避妊去勢手術を受けていないと、動物が野外で繁殖しさらに事態が悪化するおそれがあります。飼育動物の過剰繁殖に、利点は一切ありません。
よく「避妊去勢は自然ではない」という声が聞かれますが、飼育動物、とくに犬や猫のようにペットとして品種改良を重ねてきたような動物は、人間が管理することが「自然」であり、繁殖制限も人間が行わねばなりません。環境省のパンフレット「ふやさないのも愛」(平成22年)にはこう記載されています。
猫や犬は人が大昔に自然から切り離し、人と一緒に生活するように体のつくりも習性も変えた動物です。適正な数になるように自然環境が繁殖をコントロールしている野生動物ではありません。猫や犬の幸せを保てるよう、数が多くなりすぎないように繁殖をコントロールできるのは人の義務であり責任なのです。猫や犬は本能で繁殖するだけで、自分で数をコントロールすることはできません。あなたの猫や犬の繁殖をコントロールできるのは飼い主であるあなただけです。ほんとうに猫や犬を愛しているのなら、安易に生ませたり、繁殖を放置したりしてはいけません。