動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号、以下「法」とする)および「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号、以下「基準」とする)で定められている「法的に正しい」動物の飼い方について見てきました。「基準」は「家庭動物等」、すなわち家庭のペットや学校・福祉施設等の飼育動物を対象としていますが、例外として「飼い主のいない猫」の管理についても定められています。その条文をおさらいしておきましょう。
飼い主のいない猫を管理する場合には、不妊去勢手術を施して、周辺地域の住民の十分な理解の下に、給餌及び給水、排せつ物の適正な処理等を行う地域猫対策など、周辺の生活環境及び引取り数の削減に配慮した管理を実施するよう努めること。
この規定は「努力義務」ですから、違反しても罰則等はありません(行政による指導の対象にはなります)。しかしあえて「基準」に明記しているということは、国は「地域猫対策」を推奨しているといえます。しかしこの条文ではあまりにもざっくりしていて具体性に欠けます。そのため環境省は「地域猫活動」についてのガイドライン(指針)を示しています。これはあくまでも指針ですから、法的拘束力はありません。しかし「基準」において定められている「地域猫対策」を実施するための指針ですから、ここをよく理解しておくことは重要です。
地域猫活動のガイドライン
環境省が示している地域猫活動についてのガイドラインは、少々ややこしいのですが、「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」※(平成22年2月、以下「ガイドライン」とする)の中にあります。
地域猫の定義
「ガイドライン」では「地域猫」をこう定義しています。
地域の理解と協力を得て、地域住民の認知と合意が得られている、特定の飼い主のいない猫。
その地域にあった方法で、飼育管理者を明確にし、飼育する対象の猫を把握するとともに、フードやふん尿の管理、不妊去勢手術の徹底、周辺美化など地域のルールに基づいて適切に飼育管理し、これ以上数を増やさず、一代限りの生を全うさせる猫を指します。(「ガイドライン」16ページ)
地域猫活動とTNR活動
「ガイドライン」は「地域猫活動」をこう定義しています。
地域猫活動は地域住民と飼い主のいない猫との共生をめざし、不妊去勢手術を行ったり、新しい飼い主を探して飼い猫にしていくことで、将来的に飼い主のいない猫をなくしていくことを目的としています。(「ガイドライン」16ページ)
そして、地域猫活動の基本は「TNR」活動であるとしています。
TNR 活動は、地域猫活動の基本となる考え方で、飼い主のいない猫の繁殖を抑え、自然淘汰で数を減らしていくことを目的に、捕獲(Trap)し、不妊去勢手術(Neuter)を施して元のテリトリーに戻す(Return)活動のことです。(「ガイドライン」19ページ)
つまり「地域猫活動」とは、「TNR活動」を基本に、リターン後の猫を地域で管理していくという考え方であるといえます。
※ https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2202.pdf