「地域猫活動」について考える(4) 地域の合意

環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン(以下「ガイドライン」)」※から、「地域猫活動」について見ています。

 

地域の合意

「地域猫活動」を実施する際の「地域の合意」について、「ガイドライン」ではこう書かれています。

 

 地域猫活動の実施には周辺住民の理解が必要であり、自治会としての合意は重要です。地域猫活動は、一方的に行えば人間同士のトラブルの原因になりかねません。

 まず、周辺の人々に十分に趣旨を説明し、理解を得た上で行いましょう。地域で話し合いを行う際は、実際に活動を行う人、自治会、猫が苦手な方、猫の管理に反対な方も含めてください。

 事前に各関係者が集まり現状を確認した上で、活動を行うかを検討し、意思の統一を確認した上で活動を始めることが必要です。(「ガイドライン」17ページ)

 

地域住民の理解と認知

「ガイドライン」が示された平成22年当時はまだ「地域猫活動」の黎明期でした。「地域猫活動」は地域住民の総意に基づき、地域ぐるみで実施すべきだとされ、「自治会としての合意」や「(各関係者の)意思の統一」といった文言が「ガイドライン」に盛り込まれました。しかし現在では、地域における自治会の立ち位置も大きく変わり、また「自治会の合意」を待っている間に猫が増え続け、生活環境の問題もいつまでも解決しないという根本的な問題もありました。

「ガイドライン」は令和6年時点でまだ「生きて」いますが、現在においては「自治会としての合意」よりも、「地域住民の理解と認知」が重要であるという認識に変わりつつあります。つまり形式的な「自治会の合意」を待つのではなく、地域における問題意識に基づき住民有志が動き始め、同時に地域住民に「地域猫活動」の趣旨を説明し、理解してもらいながら進めていく、そして行政がそれを後方支援するというのが現在の「地域猫活動」です。各自治体が示している「地域猫活動」のガイドラインの中には、「自治会としての合意」や「地域の合意」といった文言が入っていないものも見受けられます(少なくともウチの自治体はそうです)。

 

「理解と認知」を広げていくために

「地域猫活動」は単に「飼い主のいない猫」の数を増やさないための活動ではなく、「飼い主のいない猫」に避妊去勢手術を施し管理することにより、猫に起因する迷惑行為を軽減しようとする活動です。つまり「猫」のための活動ではなく、地域の生活環境保全の活動なのです。その趣旨を説明すれば、反対する地域住民はほとんどいないはずです。もしいたとしても、粘り強く対話を重ねていきながら活動の成果を示していくことができれば、賛同とまではいかなくても、黙認くらいはしてもらえるでしょう。地域住民に「地域猫活動」への「理解と認知」を広げていくためには、さまざまな立場の人との対話が不可欠です。

 

※ https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2202.pdf