「地域猫活動」について考える(8)  避妊去勢手術 その2

環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン(以下「ガイドライン」)」※から、「地域猫活動」について見ています。

 

避妊去勢手術<続き>

 

獣医師の協力

「地域猫活動」は避妊去勢手術(「ガイドライン」では「不妊去勢手術」と表現されています)から始まりますが、手術を実施する獣医師の確保もまた大きな問題になります。その理由について、「ガイドライン」にはこう書かれています。

 

 飼い主のいない猫の不妊去勢手術は、猫の捕獲が予定どおりいかないことや院内感染源となる可能性があるなど、獣医師の負担も大きいようです。事前に、活動に理解のある動物病院へ協力を依頼しておく必要があります。(「ガイドライン」18ページ)

 

地域猫の避妊去勢手術を実施する際に、獣医師に確認しておくポイントがいくつかあります。

 

費用 避妊去勢手術の費用だけではなく、駆虫やワクチン接種などの費用も確認しておく必要があります。地域猫に関しては割引料金で手術してくれる獣医師もいますし、何らかの公的補助が受けられる場合もあります。

 

予定の変更 あらかじめ手術の予約を入れていても、野良猫の捕獲状況によっては手術数の増減があります。また捕獲そのものが失敗しキャンセルになることもあります。こういった予定の変更に柔軟に対応してくれる獣医師を探す必要があります。

 

早期避妊去勢手術 捕獲できた猫は、原則としてすべて避妊去勢手術を実施すべきです。たとえ子猫であったとしても、体重1kgまたは8週齢以上であれば手術が可能です。そういった、いわゆる早期避妊去勢手術を引き受けてくれる獣医師を探すことが望ましいでしょう。

 

妊娠中の猫 妊娠中の猫の避妊手術(つまり堕胎)を好まない獣医師もいますが、飼い主のいない猫の場合、避妊手術のチャンスはこれが最後かもしれませんし、そもそも飼い主のいない猫に子猫を出産させることにはさまざまな問題があります。そのため、堕胎を引き受けてくれる獣医師が望ましいです。

 

術式 手術後すぐにリターンする猫については切開を最小限にする、皮膚の縫合に抜糸が不要な吸収糸を用いるなど独特の術式があります。こういった術式に対応してくれる獣医師が望ましいといえます。  

 

識別措置

避妊去勢済みの猫の識別措置について、「ガイドライン」にはこう書かれています。

 

 捕獲は1回で完了しないため、不妊去勢手術した猫と、未実施の猫の識別をする必要があります。識別する方法としては、V字カット、耳ピアス(ビーズ)、マイクロチップなどがあります。(「ガイドライン」18ページ)

 

「ガイドライン」は少々古い(平成22年)ので、ときどき謎の記述がありますが、現在の日本では避妊去勢手術済みの猫の識別措置は耳のV字カット一択です。マイクロチップも個体識別の点では優秀ですが、遠くからでも判別できる耳カットは不要の捕獲を防止するという点で有利です。

 

※ https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2202.pdf