TNR(Trap-Neuter-Return)は「飼い主のいない猫」の人道的処遇として実施されますが、リターン後の猫を管理しなければ様々な問題が生じます。リターン後の猫のコロニー管理の重要性について、AVMA(米国獣医師会)の“Free-roaming abandoned and feral cats”※(以下「指針」とする)から見ています。
野良猫の問題点
「指針」は野外生活の猫の問題点として「猫の福祉の問題」「生態系への影響」「人獣共通感染症への懸念」の3点をあげています。
猫の福祉の問題
猫の野外生活にはさまざまな危険が伴います。それらは猫の福祉を著しく低下させます。
Millions of these free-roaming abandoned and feral cats exist in the United States. Most of these cats will suffer premature mortality from disease, starvation, weather extremes, or trauma, or euthanasia.
米国には、自由生活の捨て猫や野良猫が何百万頭も存在します。これらの猫のほとんどは、病気、飢餓、異常気象、外傷、または安楽殺によって早期に死亡することになります。
野外生活の猫の寿命は数年といわれています。それは病気やけが、生活環境の変化による衰弱やそれに伴う死亡もありますが、動物管理機関に収容され安楽殺されるリスクもあります。またここでは触れられていませんが、野良猫が捕食動物に襲われる(米国ではコヨーテ、日本では野犬が問題になります)こともありますし、人間による虐待により命を落とすこともあります。TNR後の猫を管理することは、猫の福祉を担保するためにも重要です。
生態系への影響
猫を野に放つと、野生生物や生態系に大きな影響を与えます。そのため野良猫はいわゆる「侵略的外来種」として警戒の対象になっています。
Negative impacts are not limited to the cats themselves. Free-roaming abandoned and feral cats are non-native predators and cause considerable wildlife destruction and ecosystem disruption, including the deaths of hundreds of millions of birds, small mammals, reptiles, amphibians, and fish.
悪影響は猫だけに限定されません。自由生活の捨て猫や野良猫は外来の捕食者であり、数億羽の鳥、小型哺乳類、爬虫類、両生類、魚類の死を含む、相当数の野生動物の破壊と生態系の破壊を引き起こします。
猫の福祉も大事ですが、野生生物の福祉もまた同様に重要です。猫を野外で管理する際には、野生生物や生態系への配慮が必須です。場合によっては、その地点における野良猫のコロニー管理自体を諦める必要があります。
※ https://www.avma.org/resources-tools/avma-policies/free-roaming-abandoned-and-feral-cats#:~:text=Free%2Droaming%20abandoned%20and%20feral%20cats%20that%20are%20not%20in,with%20local%20and%20state%20ordinances.