TNR(Trap-Neuter-Return)は「飼い主のいない猫」の人道的処遇として実施されますが、リターン後の猫を管理しなければ様々な問題が生じます。リターン後の猫のコロニー管理の重要性について、AVMA(米国獣医師会)の“Free-roaming abandoned and feral cats”※(以下「指針」とする)から見ています。
野良猫の数を減らすためのアプローチ
野良猫の数を減らすためのアプローチについて、「指針」はこう述べています。
The AVMA recognizes that multiple approaches have been suggested to reduce the population of free-roaming abandoned and feral cats. Currently there is no single solution that effectively addresses all aspects of the problem in every situation. Any interventions to manage the problem of free-roaming abandoned and feral cats should be well thought out, with consideration given to the welfare of the cats and wildlife themselves, the ecosystem in which the intervention will be conducted, the expertise and abilities of those implementing the intervention, societal and cultural attitudes, and public health.
AVMA は、自由生活の捨て猫や野良猫の数を減らすために複数のアプローチが提案されていることを認識しています。現在、あらゆる状況において問題のあらゆる側面に効果的に対処できる唯一の解決策はありません。自由生活の捨て猫や野良猫の問題を管理するための介入は、猫や野生動物そのものの福祉、介入が実施される生態系、介入を実施する者の専門知識と能力、社会的および文化的態度、および公衆衛生を考慮して、よく考え抜かれるべきです。
HurleyとLevy (2022)の“Rethinking the Animal Shelter’s Role in Free-Roaming Cat Management”(Frontiers in Veterinary Science | www.frontiersin.org March 2022 | Volume 9 | Article 847081)によると、野良猫の個体数を減らすためのアプローチには次の5つがあります。
1.Trap-Neuter-Return(TNR:主に民間ボランティアが実施)
2.lethal and non-lethal cat control methods(致死的および非致死的な駆除事業:主に行政が実施)
3.removal(譲渡を前提とした、シェルターへの全頭収容)
4.sterilization and return(シェルターに収容された野良猫に避妊去勢手術を施しリターンする:SNRまたはRTFともいう)
5.leaving cats(野良猫をシェルターに収容することなく、必要に応じ保護、TNR、または野良猫による被害防止策を講じるなどの対応を取る)
これら5つのアプローチにはそれぞれ利点と欠点があり、どれかが「正解」というものではありません。状況に合わせてどれかの方法を用いる、もしくは複数の方法を組み合わせるといった対応になります。「指針」はその際には個々の事情を考慮し、取りうる対応について熟慮すべきであるとしています。
※ https://www.avma.org/resources-tools/avma-policies/free-roaming-abandoned-and-feral-cats#:~:text=Free%2Droaming%20abandoned%20and%20feral%20cats%20that%20are%20not%20in,with%20local%20and%20state%20ordinances.