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野良猫のコロニー管理(6)  コロニー管理の必要性

TNR(Trap-Neuter-Return)は「飼い主のいない猫」の人道的処遇として実施されますが、リターン後の猫を管理しなければ様々な問題が生じます。リターン後の猫のコロニー管理の重要性について、AVMA(米国獣医師会)の“Free-roaming abandoned and feral cats”※(以下「指針」とする)から見ています。

 

Encouragement of state and local ordinances 州および地方自治体の条例の奨励

いよいよ「指針」は本題に入っていきます。ここではAVMAの、野良猫のコロニーに関する考え方が述べられています。

 

The AVMA strongly supports reducing and controlling the number of free-roaming abandoned and feral cats through humane capture by local health departments, humane societies, and animal control agencies. Free-roaming abandoned and feral cats that are not in properly managed colonies should be removed from their environment and treated in the same manner as other abandoned and stray animals in accordance with local and state ordinances. 

AVMA は、地元の保健局、人道団体、動物管理機関による人道的な捕獲を通じて、自由生活の捨て猫や野良猫の数を減らし、管理することを強く支持しています。適切に管理されていないコロニーで自由生活している捨て猫や野良猫は、その環境から取り除き、地方自治体や州の条例に従って、他の捨て猫や野良猫と同じように扱うべきです。

 

つまりAVMAは野良猫に避妊去勢手術を施し元の生息場所に戻す、いわゆるTNRを無条件に容認しているわけではありません。AVMAは基本的に、野良猫は人道的に捕獲し譲渡することを「強く支持」しています。そして野良猫を野に置く際には「適切に管理」することが必要であると述べています。「適切に管理」されていないコロニーの野良猫は、通常の野良猫と同様に扱う(つまり人道的に捕獲)べきとしています。

その根底にある考え方は、「指針」の冒頭でも述べられているとおり、「野生動物や公衆衛生への悪影響を最小限に抑え」ながら猫の福祉も担保するということです。それらを満たすためには、TNR後の野良猫のコロニー管理は必須であるといえます。

TNR後の猫のコロニーを管理(management)していくという考え方は、しばしば“TNRM”と呼ばれます。TNRMにおいては猫の餌場やトイレなどを設置したり、猫の個体管理を行っていくことになりますが、その際にはコロニーを管理する「世話人」(caregivver)が必要です。もともとそのコロニーの猫に餌を与えていた人が「世話人」になり、地元のボランティアがサポートすることが多いと考えられますが、これを地域における組織的活動に位置づけようとするのが日本の「地域猫活動」です。

 

※ https://www.avma.org/resources-tools/avma-policies/free-roaming-abandoned-and-feral-cats#:~:text=Free%2Droaming%20abandoned%20and%20feral%20cats%20that%20are%20not%20in,with%20local%20and%20state%20ordinances.