野良猫の「妊娠中絶」について考える(2)

野良猫のTNR(野良猫を捕獲して避妊去勢手術ののちに捕獲場所に戻す)を実施する際に、悩ましいのが妊娠している猫の扱いです。野良猫の場合、そのまま避妊手術を実施する(つまり妊娠中絶)ことが一般的ですが、「それは殺処分と同じ」といった批判の声があるのも事実です。

そのあたりについて猫の保護団体はどう考えているのか、英国の猫保護団体International Cat Careの意見を見ていきましょう。

 

International Cat Care

International Cat CareはTNRの際の妊娠猫の扱いについて、ホームページでこう述べています。(https://icatcare.org/unowned-cats/feral-street-cats/frequently-asked-questions/)

 

Q: What do I do if I trap a pregnant cat?

A: Pregnant cats may be clearly heavily pregnant, or you may not be able to tell until they have been anaesthetised and examined. In most cases, pregnant cats are best spayed and the kittens aborted, as the alternatives are problematic for both people and cats. Confining a street or feral cat with kittens for several weeks is extremely stressful for the cat. Releasing the cat without neutering is not an option if population control is the objective. Taking the kittens away and hand-rearing them is time-consuming and takes away valuable resources from the TNR programme. In addition, a positive outcome for the kittens is not guaranteed by hand-rearing.

Q: 妊娠中の猫を捕まえたらどうすればいいですか?

A: 妊娠中の猫は明らかにそれとわかることもありますが、麻酔をかけて検査するまで判断できない場合もあります。ほとんどの場合、妊娠している猫には避妊手術を行い、子猫は中絶することが最適です。代替手段は人間と猫の両方にとって問題となるからです。野良猫を子猫と一緒に数週間監禁することは、猫にとって非常にストレスになります。個体数抑制が目的であれば、避妊手術をせずに猫を放すという選択肢はありません。子猫を連れ去って手作業で育てるのは時間がかかり、TNR プログラムから貴重なリソースを奪うことになります。さらに、手で育てても子猫にとって良い結果が得られるとは限りません。

 

International Cat Careは動物福祉の観点から、妊娠した野良猫は妊娠中絶することが最適であるとしています。つまり

 

・出産や育児のために野良猫を収容することは、猫にとってストレスである

・未処置の妊娠猫を野に放つことは、野良猫の個体数を増やすおそれがある

・生まれた子猫を保護して育てるには手がかかるため、そのリソースはTNRに振り向けるべきである

・生まれた子猫を育てたとしても、無事に育つという保証はない

 

しかし“In most cases”(ほとんどの場合)と但し書きが付けられていることからもわかるように、例外もまた存在します。次回はそのことについて掘り下げてみましょう。