野良猫のTNR(野良猫を捕獲して避妊去勢手術ののちに捕獲場所に戻す)を実施する際に、悩ましいのが妊娠している猫の扱いです。野良猫の場合、そのまま避妊手術を実施する(つまり妊娠中絶)ことが一般的ですが、本当にそれしか選択肢がないのか、米国の猫保護団体Neighborhood Catsの“Neighborhood Cats TNR Handbook 2nd edition”(以下「ハンドブック」)から見ていきましょう。
「3つの選択肢」
Neighborhood Catsは妊娠している野良猫の扱いについて、3つの選択肢を示しています。(「ハンドブック」87ページ)
(1) trap and spay her and abort the pregnancy,
猫を捕獲して避妊し、妊娠中絶する、
(2) trap her and let her give birth in a cage or other confined space where she can then raise the kittens or
猫を捕獲し、ケージまたはその他の閉鎖された場所で出産させ、そこで子猫を育てる または、
(3) don’t trap her and allow her to give birth outdoors, trapping her and any surviving kittens at a future date.
猫を捕らえずに屋外で出産させ、その後母猫と生き残った子猫を捕らえる
やはり妊娠中絶が基本
とはいえNeighborhood Catsも野良猫の出産を奨励しているわけではなく、妊娠中絶が基本であると考えています。その理由について、「ハンドブック」にはこう記載されています。
Unless a caretaker objects on religious or other deeply personal grounds, Neighborhood Cats recommends trapping a pregnant cat and aborting the kittens whenever possible. This is because of the harsh realities of cat overpopulation. If the kittens are born and you find homes for them, it could mean other cats already in the shelter system will not be adopted and will be euthanized instead. If the kittens are born and not adopted, but live outdoors as ferals, their mortality rate is likely to be high and most of their lives short. Right now, with so many cats dying in shelters and on the streets, more kittens only make the situation worse. If your veterinarian is very experienced with spay/neuter, cats can be safely spayed right up until the last days of a pregnancy. Discuss with your clinic or veterinarian to find out what their policies are.
宗教的またはその他のきわめて個人的な理由で世話人が反対しない限り、Neighborhood Catsは妊娠した猫を捕獲し、可能な限り子猫を中絶することを推奨しています。それは猫の過剰繁殖という厳しい現実があるからです。子猫が生まれ、引き取り先が見つかったとしても、既にシェルターに入っている他の猫は譲渡されず、安楽殺される可能性があります。子猫が生まれても譲渡されず、野良猫として屋外で暮らす場合、その死亡率は高くなり、ほとんどが短命に終わります。現在、非常に多くの猫がシェルターや路上で命を落としており、子猫の増加は状況を悪化させるだけです。 獣医師が避妊去勢手術の経験が豊富であれば、猫は出産数日前まで安全に避妊手術を受けることができます。 クリニックまたは獣医師に相談して、その方針を確認してください。(「ハンドブック」88ページ)
しかしそれでも、出産を選択せざるを得ない場合もあります。その際には保護収容して出産させるか、監視下のもと屋外で出産させるかの選択を求められます。