Dolanら(2020)の論文“Pre-mortem risk factors for mortality in kittens less than 8 weeks old at a dedicated kitten nursery”※(子猫の保育所における生後8週齢未満の子猫の死亡率の生前リスク要因)を参考に、保護子猫の死亡リスクについて見ています。
「子猫の保育所」とは
まず最初に、この研究が行われた「子猫の保育所(Kitten Nursery)」についてご紹介しておきます。この施設はASPCA(米国動物虐待防止協会)がニューヨーク市に開設しているもので、ASPCAのホームページ(https://www.aspca.org/animal-care-recovery/kitten-nursery)ではこう紹介されています。
During the summer feline breeding season, known as kitten season, animal shelters across the country are flooded with vulnerable newborn cats. To accommodate this seasonal influx of felines, the ASPCA opened a facility in 2014 dedicated to the care and treatment of neonatal (newborn) kittens. The city’s first high-volume Kitten Nursery provides care for felines too young to survive on their own.
「子猫の季節」として知られる夏の猫の繁殖期には、全国のアニマルシェルターは脆弱な生まれたての猫で溢れかえります。この季節的な猫の流入に対応するため、ASPCAは2014年に新生仔(生まれたばかりの) 子猫の世話と治療に特化した施設を開設しました。市内初の大規模子猫保育所では、自力で生きていくには幼すぎる猫の世話を行っています。
The Nursery serves both nursing cats with litters and orphaned kittens up to eight weeks old. These kittens usually come to us through Animal Care Centers of New York City (ACC) and from the public throughout the five boroughs. The Nursery has a particular focus on kittens with greater medical needs, helping them through the most vulnerable stage of their lives, until they are old enough and healthy enough for adoption.
「ナーサリー」では、育児中の母猫と、生後8週齢までの孤児になった子猫の両方を扱っています。これらの子猫は通常、ニューヨーク市動物保護センター (ACC) や一般市民から当施設に運ばれてきます。「ナーサリー」では、特に医療ニーズの高い子猫に重点を置き、生涯で最も脆弱な時期を乗り越え、十分に成長して健康になり、譲渡できるまでサポートしています。
受入れ実績
論文によると、2017年にこの「子猫の保育所」で受入れた猫の総数は1,578頭で、その内訳は、飼い主不明として市民から直接持ち込まれた猫が1,162頭、ACCから移送された猫が401頭、飼い主から引き取った猫が11頭、そして警察によって保護された猫が4頭でした。なおこの実績には子猫だけではなく、育児中の母猫も含まれます。
※ Journal of Feline Medicine and Surgery 2021, Vol. 23(8) 730–737
https://doi.org/10.1177/1098612X20974960