子猫の死亡リスク管理について考える(5) 症状と死亡の関係

Dolanら(2020)の論文“Pre-mortem risk factors for mortality in kittens less than 8 weeks old at a dedicated kitten nursery”※1(子猫の保育所における生後8週齢未満の子猫の死亡率の生前リスク要因)を参考に、保護子猫の死亡リスクについて見ています。

 

調査対象の子猫

2017年の4~11月に「子猫の保育所」が受け入れた1,578頭の猫のうち、母猫や受け入れ時に8週齢以上だった子猫、そしてデータが利用できなかった子猫を除いた、1,363頭の子猫が調査対象となりました。さらに施設への滞在期間が極端に長期間であった10頭は統計から除外され、最終的には1,353頭の子猫が調査対象になりました。

受け入れ時の日齢は0~56日(中央値は29日)、受入れ時の体重は65~1,202 g(平均値は395.5 g)、滞在期間は0~110日(中央値は43日)でした。また1,353頭の子猫のうち、死亡した子猫は170頭(12.6%)でした。

 

症状と死亡との関係

「子猫の保育所」における子猫の症状の有無と死亡の有無について、症状ごとにまとめられました。

 

汎白血球減少症

無症の子猫1,340頭のうち166頭(12.4%)が死亡したのに対し、有症の子猫13頭のうち4頭(30.8%)が死亡しました。

 

体重減少

体重減少がみられなかった子猫286頭のうち61頭(21.3%)が死亡したのに対し、体重減少がみられた子猫1,067頭のうち109頭(10.2%)が死亡しました。

 

猫かぜ(URI)

治療が必要な上気道症状を示さなかった子猫835頭のうち139頭(16.6%)が死亡したのに対し、症状を呈した子猫518頭のうち31頭(6.0%)が死亡しました。

 

食欲廃絶

フードやミルクを正常に摂取していた子猫647頭のうち102頭(15.8%)が死亡したのに対し、食欲を示さなかった子猫706頭のうち68頭(9.6%)が死亡しました。

 

削痩

受け入れ時にピュリナBCSが3.5以上だった子猫985頭のうち89頭(9.0%)が死亡したのに対し、BCSが3.5未満だった子猫243頭のうち52頭(21.4%)が死亡しました。なお受け入れ時にBCSの測定が実施されなかった子猫125頭のうち17頭(13.6%)が死亡しました。

 

下痢

下痢の症状を示さなかった子猫378頭のうち87頭(23.0%)が死亡したのに対し、下痢の症状を示した子猫975頭のうち83頭(8.5%)が死亡しました。

 

外傷

外傷がみられなかった子猫1,185頭のうち155頭(13.1%)が死亡したのに対し、外傷がみられた子猫168頭のうち15頭(9.8%)が死亡しました。

 

※ Journal of Feline Medicine and Surgery 2021, Vol. 23(8) 730–737 

https://doi.org/10.1177/1098612X20974960