子猫の死亡リスク管理について考える(7) 多変量モデルによる修正値

Dolanら(2020)の論文“Pre-mortem risk factors for mortality in kittens less than 8 weeks old at a dedicated kitten nursery”※1(子猫の保育所における生後8週齢未満の子猫の死亡率の生前リスク要因)を参考に、保護子猫の死亡リスクについて見ています。

 

多変量モデル

この研究では「子猫の保育所」に受け入れられた子猫の症状や受け入れ時の状況と、死亡状況との関連について調査されましたが、複数の要因の関連について解析した「多変量モデル(multivariable model)」 を用いると、いろいろなことが見えてきます。

 

多変量モデルによる修正値

論文では、それぞれのリスク要因の死亡データを多変量モデルを用いて修正し、要因ごとの死亡リスクを計算しています。この数値の見方は、例えば汎白血球減少症に罹患していた子猫は、そうでない猫よりも死亡リスクが13倍高いということです。逆に外傷があった子猫については、そうでない猫よりも死亡リスクが60%低いということになります。

 

症状

汎白血球減少症 13倍

体重減少 9.3倍

URI(上気道感染症) 3.8倍 ※処置が必要なものに限る

食欲廃絶 3.3倍

受け入れ時のBCSが3.5未満 1.9倍

下痢 1.5倍

外傷 0.4倍

 

受け入れ時の状況

受け入れ時体重が65~258g 13倍

受け入れ時体重が259–393g 3.0倍

受け入れ時体重が394–575g 1.4倍

受け入れ時体重が576–1202g Reference ※2

受け入れ日が4月10日~6月12日 0.1倍

受け入れ日が6月13日~8月12日 0.3倍

受け入れ日が8月13日~11月12日 Reference 

メス 0.9倍

受け入れ時の日齢が0~20日 Reference

受け入れ時の日齢が21~34日 0.6倍

受け入れ時の日齢が35~56日 0.7倍

 

※1 Journal of Feline Medicine and Surgery 2021, Vol. 23(8) 730–737 

https://doi.org/10.1177/1098612X20974960

 

※2 Reference(基準値)とは簡単に言うと、その要因の有無によるリスクの差がないということです。