Dolanら(2020)の論文“Pre-mortem risk factors for mortality in kittens less than 8 weeks old at a dedicated kitten nursery”※(子猫の保育所における生後8週齢未満の子猫の死亡率の生前リスク要因)を参考に、保護子猫の死亡リスクについて見ています。
リスク要因の詳細
論文は「子猫の保育所」に収容された子猫の死亡リスク要因として、受け入れ時の低体重、汎白血球減少症の感染、体重減少、(処置が必要な)上気道症状、食欲不振、収容時のBCSの低さ(=削痩)、下痢のすべてが重要であると結論付けました。それぞれの詳細について見ていきましょう。
受け入れ時の低体重
この論文において最も重要であるとされた子猫の死亡リスク要因は「受入れ時の低体重」です。最も体重が軽いグループ(受け入れ時体重65~258g)の死亡リスクは13倍でした。このグループの子猫の多くが最も若い(受け入れ時の日齢が0~20日)グループと重なっていましたが、比較的日齢の高い子猫も含まれていました。もちろん猫の体重は品種によって異なりますが、調査対象の猫のほぼすべてが雑種であったことから、品種による体重のばらつきの可能性は低いと考えられます。どちらかといえば、出生時の低体重や体重が増加しない、または体重の減少といった要因は、栄養失調や病気と関連する可能性があります。
今回、子猫が初乳を摂取したか否かのデータは得られていませんが、初乳を十分に摂取できなかったことも、幼く低体重の子猫の死亡リスクの上昇に寄与している可能性があります。
収容時の体重減少
収容時の体重減少もまた、重要な子猫の死亡リスク要因のひとつとされています。体重減少は病気や栄養失調の指標として一般的で、特に子猫はそれらの影響を受けやすいと考えられるからです。体重減少がみられた子猫の死亡リスクはそうでない子猫の9倍となっています。当然と言えば当然ですが、受け入れ時に低体重でその後体重が減少した子猫は、受け入れ時に体重が重くその後体重が減少した子猫や受け入れ時に低体重だったがその後体重が減少しなかった子猫よりも死亡リスクが高いと報告されています。
BCSよりも体重が重要?
この研究によると、受け入れ時に低体重だった子猫の大部分はBCSが3.5以上(いわゆる「削痩」ではない)でした。これはつまり低体重の子猫に限って言えば、「日齢相応に小さい」のであって、必ずしも低体重=削痩ではないということを意味します。この研究は、たとえBCSが適正値であったとしても、低体重の子猫には収容中の注意深い監視が必要であることを示唆しています。
※ Journal of Feline Medicine and Surgery 2021, Vol. 23(8) 730–737
https://doi.org/10.1177/1098612X20974960