アニマルシェルターにおけるワクチン接種(3) コアワクチン

2024年に改正された、世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドライン(https://wsava.org/wp-content/uploads/2024/04/WSAVA-Vaccination-guidelines-2024.pdf)。から、アニマルシェルターに収容された犬や猫のワクチン接種について見ています。

 

コアワクチンとは

コアワクチンとは必須のワクチンという意味で、必要に応じて接種するワクチンはノンコアワクチンと呼ばれます。

 

ワクチンの種類

ワクチンにはさまざまな種類がありますが、ここで理解していただきたいのは「生ワクチン(MLV)」と「不活化(inactivated)ワクチン」の違いです。ものすごく簡単に言うと、生ワクチンは生きた病原体の毒性を弱めたもの、不活化ワクチンは病原体を殺した(不活化)残骸です。それぞれに利点と欠点がありますが、シェルターにおいては効果が早く発現する生ワクチンが選択されます。

 

コアワクチン接種の考え方

シェルターにおけるコアワクチンの接種は、その動物の感染を防ぐとともに、シェルター内で感染症が蔓延することを防止することも目的としています。そのため接種についての考え方は家庭動物とは異なります。

 

原則としてすべての動物に接種する

シェルターにはさまざまな動物が収容されます。飼い主に持ち込まれたペット、野良動物、狂犬病の検診のため収容された動物、虐待現場からレスキューされた動物、妊娠中や授乳中の動物、病気やけがの動物、TNRやSNRの手術のために一時収容された野良猫など…。コアワクチンは原則としてこれらすべての動物に接種します。

家庭動物の場合、例えば妊娠中や病気・けがの動物へのワクチン接種は推奨されませんが、シェルターにおいてはワクチンによる感染症予防効果が、動物や胎仔への悪影響のリスクを上回ると判断されます。シェルターはそれだけ感染症のリスクが高い場所だと認識されているわけです。

財政上の理由から、譲渡できそうな動物にのみワクチンを接種する(安楽殺の可能性がある動物には接種しない)というシェルターも見受けられますが、限られた動物にのみワクチンを接種しても集団免疫を保つことができず、シェルター内で感染症が蔓延し、かえって高くつくといったことになりかねません。

 

幼齢動物には早く、短期間で接種を繰り返す

シェルターにおいては、子犬や子猫へのコアワクチン接種は生後1か月齢から開始し、5か月齢になるまで2~3週間おきに接種を繰り返します。これは母親由来の抗体による干渉を効率的に防ぐためで、家庭動物(1.5~2か月齢)よりも接種開始が早く、サイクル(3~4週間)も短めです。