2024年に改正された、世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドライン(https://wsava.org/wp-content/uploads/2024/04/WSAVA-Vaccination-guidelines-2024.pdf)。から、アニマルシェルターに収容された犬や猫のワクチン接種について見ています。
犬のコアワクチン
「ガイドライン」はシェルターにおける犬のコアワクチン(必須のワクチン)としてCDV(犬ジステンパーウイルス)、CPV(犬パルボウイルス)、CAV-2(犬アデノウイルス2型)、CPiV(犬パラインフルエンザウイルス)、および Bordetella bronchiseptica(ボルデテラ菌)のワクチンをあげています。狂犬病ワクチンもコアワクチンとされていますが、その地域の法令によります。
「ガイドライン」が示している具体的製品は次のとおりです。
CDV+CAV+CPV+CPiVの生ワクチン(注射)
いわゆる犬の「5種混合ワクチン」です。「4種ではないか」というツッコミもありそうですが、CAVのワクチンはCAV-1(犬伝染性肝炎ウイルス)にも有効なので、それも含めて「5種」と言っています。受け入れ時にすぐ接種し、2~3週間後に再接種します。5か月齢未満の子犬の場合、1か月齢以降であれば受け入れ時すぐに接種し、5か月齢に達するまで2~3週間ごとに繰り返し接種します。
ボルデテラ菌のワクチン
ボルデテラ菌のワクチンは飼い犬ではコアワクチンとされていませんが、シェルターではコアワクチンとされています。「ガイドライン」によると、ボルデテラ菌のワクチンには次の種類があります。
・ボルデテラ+CPiV(鼻腔内投与)
・ボルデテラ+CPiV+CAV(鼻腔内投与)
・ボルデテラ単体(経口投与)
・ボルデテラ+CPiV(経口投与)
成犬および3週齢以降の子犬に対しては、鼻腔内投与のワクチンが第一選択となります。鼻腔内投与が難しい場合には、7~8週齢以降であれば経口投与のワクチンを用います。鼻腔内投与や経口投与のワクチンは母親由来の抗体の影響を受けないため、受け入れ時に1回投与すればよく、繰り返し接種する必要はありません。なお日本で販売されているのは、ボルデテラ+CPiV+CAVの鼻腔内投与ワクチンのみです。
狂犬病ワクチン(注射)
現地の法令に従い接種します。すぐに譲渡する場合には譲渡前に、長期収容が見込まれる場合は受け入れ時に接種するのが一般的です。日本においては「生後91日以降で、狂犬病ワクチン未接種もしくは接種状況が不明の犬」を管理するに至ってから、30日以内に狂犬病ワクチンを接種することが義務とされていますので、シェルターにおいても長期収容が見込まれる際には接種が必要です。