2024年に改正された、世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドライン(https://wsava.org/wp-content/uploads/2024/04/WSAVA-Vaccination-guidelines-2024.pdf)。から、アニマルシェルターに収容された犬や猫のワクチン接種について見ています。
犬のノンコアワクチン
「ガイドライン」は、シェルターにおける犬のノンコアワクチン(必須ではないが、必要に応じて接種するワクチン)として「犬レプトスピラ病ワクチン」「ライム病ワクチン」「犬インフルエンザワクチン」の3つをあげています。しかし現在日本で用いられているのは、犬レプトスピラ病ワクチンのみです。
ノンコアワクチン接種の考え方
ノンコアワクチンはその地域、もしくはシェルター内における該当疾病の暴露リスクが高いと認められる場合に、限定的に接種するワクチンです。ノンコアワクチンを接種する際には、シェルター滞在中、および新規受け入れの犬に対し、1回目の接種を行います。一般的なシェルターの場合、2回目の接種を待たずに犬が譲渡されることが多いため、譲渡の際には新しい飼い主に2回目の接種が必要である旨を伝える必要があります。またその犬が数か月以上の収容が見込まれる場合や、サンクチュアリのように終生飼養を前提としたシェルターの場合、受け入れ時にコアワクチンに加え、ノンコアワクチンも接種します。
犬レプトスピラ病ワクチン
レプトスピラ病は日本でも西日本を中心に散発している人獣共通感染症で、日本では人で感染症上の4類感染症、犬や畜産動物では一部の血清型が家畜伝染病予防法の届出伝染病とされています。「ガイドライン」で示されているシェルターの犬のノンコアワクチンのうち、現在日本で使用されているのは犬レプトスピラ病ワクチンのみです。犬レプトスピラ病ワクチンは単体のものもありますし、混合ワクチンに含まれていることもあります。ただし大阪府獣医師会(2017)(https://www.osakafuju.or.jp/knowledge/file/doc_saigai181012.pdf)によると、「ワクチンは血清型依存性で、ワクチンに含まれていない血清型に対する予防効果はないとされている。また、ワクチンにより発症の阻止や重症化は防げるが、腎臓への定着防止効果の有無については疑問だと言われている」ので、その地域やシェルターで流行している血清型を把握し、効果のあるワクチンを接種する必要があります。
ライム病ワクチン(海外のみ)
ライム病は欧米で問題になっている人獣共通感染症で、日本では中間宿主のダニが生息する北海道や長野県などで発生がみられます。海外では犬用のワクチンが市販されていますが、完全な防御は難しいようです。
犬インフルエンザワクチン(海外のみ)
犬インフルエンザは比較的新しい感染症で、米国や中国で発生がみられますが、まだ日本では発生していません。海外ではワクチンが使用されていますが、完全な防御は難しいようです。