2024年に改正された、世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンガイドライン(https://wsava.org/wp-content/uploads/2024/04/WSAVA-Vaccination-guidelines-2024.pdf)。から、アニマルシェルターに収容された犬や猫のワクチン接種について見ています。
猫のノンコアワクチン
「ガイドライン」は、シェルターにおける猫のノンコアワクチン(必須ではないが、必要に応じて接種するワクチン)として「FeLV(猫白血病ウイルス)ワクチン」「猫クラミジアワクチン」「ボルデテラ・ブロンキセプチカワクチン」の3つをあげています。
FeLVワクチン
「ガイドライン」は猫のFeLVワクチンはシェルターにおけるノンコアワクチンとしていますが、接種の判断については“AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines” (2020)に基づくとしています。まず大前提として、FeLVワクチンの接種前にはFeLVの検査を行い、陰性の猫にのみワクチンを接種します。なお日本では「4種混合ワクチン」に含まれます。
個別飼育の猫
「ガイドライン」は、シェルターで個別飼育されている猫についてはFeLVの感染リスクが低いため、FeLV検査、ワクチン接種いずれも任意としています。ワクチン未接種の猫を譲渡する際には新しい飼い主にその旨を伝え、ワクチン接種についてかかりつけの動物病院に相談するよう助言する必要があります。
集合飼育の猫
猫を集合飼育しているシェルターの場合、集団に入れる前のFeLV検査は必須です。検査陽性の猫については、集団から隔離して収容する必要があります。ワクチンを接種するか否かについては、猫の収容状況で判断します。
短期収容の猫
短期収容が前提(すぐに譲渡される)の猫については、集合飼育であってもFeLVワクチンの接種は推奨されません。なおワクチン未接種の猫を譲渡する際には新しい飼い主にその旨を伝え、ワクチン接種についてかかりつけの動物病院に相談するよう助言する必要があります。
長期収容の猫
長期収容が見込まれる場合、もしくは終生飼養が前提のサンクチュアリの場合、集合飼育するのであればFeLV ワクチン接種が推奨されます。
猫クラミジアワクチン
クラミジア・フェリス(猫クラミジア)はいわゆる「猫かぜ」の原因菌のひとつですが、重要度がそれほど高くないためノンコアワクチンとされています。日本では「5種混合ワクチン」に含まれます。
ボルデテラ・ブロンキセプチカワクチン
犬や猫の呼吸器疾患の原因菌のひとつのボルデテラのワクチンは、シェルターの犬ではコアワクチンとされていますが、猫ではそれほど重要ではないのでノンコアワクチンとされています。日本では犬用のワクチンはありますが、猫用のワクチンはありません。(終)