殺処分数を減らすには(1) 日本の動物収容の現状

犬や猫の「殺処分ゼロ」というスローガンについて、異を唱える人はほとんどいないでしょう。もちろん殺処分はないほうがよいです。私もそう思っています。「殺処分ゼロ」を達成することはきわめて簡単です。台湾のように法律で禁止すればよいのです。しかしそれで殺処分は実行されないかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。そのひずみが、結果的に一部の動物たちを苦しめることにもなりかねません。

私は「殺処分ゼロ」という目先の数値目標よりも、殺処分の必要がない社会の実現を目指すことが大事だと考えています。そのためには、いかに殺処分対象の動物の数を減らすかということを戦略的に考えていかねばなりません。それに先立ち、現在の日本における犬や猫の収容状況から概観していきましょう。

 

収容数

行政機関で引取った犬や猫の数については、環境省が公開している「動物愛護管理行政事務提要」で見ることができます。令和4年度の統計(令和5年度動物愛護管理行政事務提要:https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_4_1.pdf)によると、その1年間に引取られた犬や猫の数は次のとおりです。

 

犬(成熟個体):18,119 (29%)

犬(幼齢個体):4,798 (7.7%)

猫(成熟個体):15,288 (24.5%)

猫(幼齢個体):24,212 (38.8%)

 

この数字には、次のパターンのすべてが含まれます。

 

・動物愛護法第35条第1項の規定に基づく、飼い主からの引取り

・動物愛護法第35条第3項の規定に基づく、所有者の判明しない犬又は猫の引取り

・動物愛護法第36条第2項の規定に基づき収容された負傷動物等(死体を除く)

・狂犬病予防法第6条第1項の規定により抑留された犬

・その他条例に基づく引取り

 

なお、負傷動物の収容数は「成熟個体」と「幼齢個体」が分けられていないため、ここでは幼齢動物の収容数は「返還数+譲渡数+殺処分数」とし、分類不能な(おそらく処分保留数と思われる)余剰数は「成熟個体」に計上していることをご承知おきください。

また「幼齢個体」とは離乳前の個体を指し、それ以外は「成熟個体」としています。ただし一部の自治体のように、環境省への報告の際に「幼齢個体」を別計上していない場合は、すべて「成熟個体」に含まれます。ですので、実際には幼齢個体の割合はこの値よりも大きくなります。

この数字を見ると、やはり幼齢子猫の割合が高いですが、成犬や成猫と比べて極端に多いわけではありません。そして目立つのが幼齢子犬の少なさです。そのことについては、次回以降に考えてみましょう。